覚え書:「ひと 『脱原発宣言』を実行する城南信金理事長 吉原毅さん(57)」、『毎日新聞』2012年6月1日(金)付。

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ひと 「脱原発宣言」を実行する城南信金理事長 吉原毅さん(57)

 「同調する経済人は少ないが、ごまめの歯ぎしりでも訴え続ける」
 東京電力福島第1原発事故で、ふるさとを追われた人々を目の当たりにして、昨年4月、「信金の原点は、助け合って地域社会を守る協同組合運動。見て見ぬふりでは、存在気がなくなる」と脱原発を宣言した。省エネなどを進め、「原発で作る約3割分節電」という目標が射程に入った。
 次々と手を打った。電化製品を省エネ型に取り換え、照明は半分にし、発光ダイオード(LED)に替えた。冷房温度は29度。11年度全店舗の電力消費を前年度比23・5%減に抑制した。「原発以外の電気を使おう」と、今年1月、電力の契約を東電から天然ガス発電会社に切り替えた。「年1000万円の節約にもつながった」という。
 一方、ソーラーパネルや自家発電機をローンで買う人には金利の軽減を、自己資金の場合は、預金金利の上乗せを始めた。ローン申し込みは2億円を超えた。「金融で省エネを後押しできる」と手応えを感じている。
 地元の中小企業を支えたいと、城南信金(本店・東京都品川区)に就職した。「貸すも親切、貸さぬも親切」の言葉を残した故小原鉄五郎元理事長(元全国信用金庫協会会長)の薫陶を受けた。
 「お客の役に立つ融資に徹する」「投機の金は貸さない」方針を貫く。
 月に4、5回、脱原発の講演に出向く。「企業の人が脱原発を言ってくれてうれしい」。ある母親の言葉が励みになっている。文・竹地広憲 写真・久保玲

 よしわら・つよし 東京・蒲田生まれ。77年、城南信金入り。同信金の預金残高は約3.4兆円(12年3月末)で、業界2位。
    −−「ひと 『脱原発宣言』を実行する城南信金理事長 吉原毅さん(57)」、『毎日新聞』2012年6月1日(金)付。

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