「法律違反を許さない、犯罪を許さないと言うのは、当たり前の主張じゃないですか」という訳ですが、それを主張するために法律違反や犯罪を犯すというのでは説得力がないと考えるのですが、……


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 この日、街宣に参加することは同居している両親には告げてこなかった。
 「たぶん、こんな活動に参加したと知ったら心配すると思います。僕の良心は、僕ほどには日本が危ない状況にあると思っていません。それに県内の農家ではいま、人手不足を意義ナウために中国人の実習生を積極的に招いています。僕の家でも、いつかはその流れに乗るかもしれない。これからも表立って活動に参加することはできないかもしれませんね」
 つい先ほどまで、桜井や副会長の先崎が、「犯罪シナ人は出て行け」と叫んでいたばかりである。いずれは中国人の雇用も考えなければいけない農業現場で働く彼にとって、その点だけは複雑な思いで聞かざるを得なかったであろう。
 だからなのか。彼が去り際に、ぽつりと漏らした一言が印象的だった。
 「中国人には、マトモな人がいっぱいいるんですけどね……」
    −−安田浩一『ネットと愛国』講談社、2012年、68−69頁。

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twitterのまとめですいません、しかも読了していないアレで(涙

安田浩一『ネットと愛国』(講談社)、最初の1/3読んでいます。
在特会を肯定する訳じゃありませんし、辟易とする連中だとは思いますが、会員内にも温度差があることに驚いた。

ただ、「叩きだせ」と罵られる側の恐怖への想像力のなさ、事実の実証確認を無視する点は共通している。

著者の安田さんは、時間をかけて丁寧に取材している。
ただ、事実確認による討議や熟議による「誤読」の「訂正」や「説得」は、やっぱり不可能なんじゃないかとの思いも強くなった。

だからといって放置してよい訳じゃないんですが。有効なチャンネルはどこか−−日本の生きる僕の責任でもあるわけですが。

彼らは、「法律違反を許さない、犯罪を許さないと言うのは、当たり前の主張じゃないですか」という訳ですが、それを主張するために法律違反や犯罪を犯すというのでは説得力がないと考えるのですが、こういう考えは、「気分」や「情念」の前に無力なのかとも、頭を抱えてしまう。

ただ、頓珍漢な「暴論」に対して、「馬とか鹿には触れるな」とか「放っておけば収まる」という小市民的なスノビズムが、却って増長させたのは事実だろう。だから、あれだけの勢力拡大をしたわけだから。お上品に「眉をひそめる」だけ、というではよくないだろうと思う。

相手が誰であろうと「殺せ」と罵って、「恐怖」を抱かせるだけで十分に「犯罪」だ。「あーコワイ」、「関わらない方が」ってカタチで増長させる訳ではない何かに取り組まないとだな……思います。




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