覚え書:「時流底流 著作権と私的利用」、『毎日新聞』2012年6月23日(土)付。



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時流底流 著作権と私的利用

 違法ダウンロード罰則化を含む改正著作権法が、今国会で成立した。インターネット上のファイルのダウンロードという故意性の判断が難しい行為に「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」を課すことの是非だけでなく、法案の審議がないまま成立したことについて、専門家らから「乱暴な話だ」と批判の声が上がっている。
 音楽や映像を個人で楽しむために複製する「私的利用」は、著作権法の中でも「例外」として認められている。映画館での映画の録画・録音も、以前は「私的利用」として違法ではなかったが、07年施行の「映画盗撮防止法」では違法行為になり、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が課せられることになった。これも、映画業界が要望し、議員立法で成立。今回と似た経緯だった。
 違法ダウンロード」をする人は多数に及ぶことが想定され、警察が全員を取り締まったり権利者が告訴したりするのは困難だ。法案を後押しした日本レコード協会は、刑罰があることによる抑止効果を狙ったと認めている。元検事の落合洋司弁護士は「最初から平等な法執行ができないと分かっていて、むやみに刑罰を振り回すのは好ましくない」と警鐘を鳴らす。
 今回の改正法では、暗号(技術的保護手段)で保護されたDVDなどの映像を、暗号を解除してパソコンなどにコピー(複製)する行為を、私的利用であっても著作権法違反とする条項が含まれた。これまでは、複製そのものを防止するコピーガードの解除行為は違法とされていたが、映像にスクランブルをかけるなどして視聴を不能にするアクセスガードの解除は違法ではなかった。だが、今回の改正法ではどちらも違法になり、解除プログラムを配信すれば「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科せられる。
 インターネットの法律問題に詳しい岡村久道弁護士によると、現実にはコピーガードとアクセスガードが混在して使われ、区別は困難な状況だったという。岡村弁護士は「ようやく実態に即した形になった」と改正法を評価したうえで「今は著作権の権利者保護一辺倒になっているのではないか。私的利用は文化の発展のために積極的に認めていくという考え方もある。著作権法は改正を重ねて寄せ木細工のようになってしまっている。全体を見直して、もっと分かりやすいものにした方が良い」と指摘している。【岡礼子】
    −−「時流底流 著作権と私的利用」、『毎日新聞』2012年6月23日(土)付。

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論調として違和感がありますが、経緯は明瞭なので紹介しておきます。





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