書評:原克『白物家電の神話 モダンライフの表象文化論』水声社、2012年。



ヒトと家電の生活史

原克『白物家電の神話 モダンライフの表象文化論水声社、2012年。

電気と家電製品の普及で便利になった私たちの生活。しかし便利さと引き替えに、私たちの生活は「モダンライフ神話」へ惑溺することにもなってしまった。家電抜きの生活はもはや想像することが不可能である。

本書は、手法としてバルトの神話学を念頭に置きながら、モノとして「白物」家電の変遷とそれが触発する生活世界の意義を解き明かす記号論となっている。

例えば冷蔵庫に注目してみよう。もともと冷蔵庫は「冷蔵函」。それに外付けの冷却装置が付き、徐々に冷蔵庫になっていく。興味深いのは、もともとは、家具調の仕立てだったということ。これが「清潔」や「寒さ」、そして科学者の白衣をイメージする「白」に取って代わっていく。

記号論?と聞くと本書を手に取ることに躊躇を覚える方もいよう。しかし、文化と社会、そして政治的含意が交差するのは、人間の生活である。その意味の変遷を丁寧に追跡する本書は、時代史・生活史としても抜群に面白い。





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