覚え書:「つながる:ソーシャルメディアと記者 ネット上の知識を書籍化=石戸諭」、『毎日新聞』2012年09月22日(土)付。



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つながる:ソーシャルメディアと記者 ネット上の知識を書籍化=石戸諭

 今月末、一冊の本が書店に並ぶ。学習院大の田崎晴明教授(理論物理学)が書いた「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」(朝日出版社、1050円)だ。問題が多岐にわたる放射線について、一科学者が、何が分かっていて何が分かっていないかを、これまでの蓄積を踏まえて丁寧に書きつづった本だ。

 中身の紹介はここまで。私が注目するのは、出版されるまでの経緯だ。実は同書は既にインターネット上(http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/)に無料で全文公開されており、修正点も田崎教授自身がツイッターなどで発信している。印刷することも自由にできるし、タブレット端末に取り込めば電子書籍として完成形で読める。わざわざ、紙での出版を考えたのはなぜなのか。編集を担当した朝日出版社第二編集部(ツイッター:@asahipress_2hen)に聞いてみた。

 担当編集者は、ネットにある「知識」を外に広げていくことを重視した。情報として一回読んで終わり、ではなく繰り返し読むことに堪えうるものを本にする。著者が書籍化を希望していることも後押しになった。ネットはつなげる環境が無いとアクセスすらできない。特別な機器を用意しなくても手に取れる書籍を通して基礎知識を整理したい。そんな被災者もいるかもしれない。何より有益なコンテンツをいろいろな方法で流通させることが大事ではないのか。ネットにも書籍にもあるという環境を整えることに編集者は意義を見いだす。社内から異論はでなかったという。
 ネットと既存メディアの共存はこうした形で進んでいる。ネットの言論空間では意見が近いもの同士で固まってしまい「知っている人は知っている」で議論が終わりがちだ。そこを離れて、ネット上で交わされる良質の議論を社会につなげていくことも、これからの記者や編集者の役割なのだろう。一冊の本から学べることは多い。【大阪社会部】
    −−「つながる:ソーシャルメディアと記者 ネット上の知識を書籍化=石戸諭」、『毎日新聞』2012年09月22日(土)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20120922ddm012070186000c.html




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