覚え書:「今週の本棚:昭和後期の家族問題=湯沢雍彦」、『毎日新聞』2012年10月21日(日)付。
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今週の本棚:昭和後期の家族問題
湯沢雍彦
(ミネルヴァ書房・3675円)
家族の姿が、戦後から昭和末期までどのように変わってきたかを経済、教育、文化などの側面から浮き彫りにする。データと資料は膨大だが、かみくだかれた文章でわかりやすい。市井の人の声も丁寧に拾い集められ、お茶の間の風景が静かによみがえる。
著者は御茶の水女子大名誉教授で、家族研究の第一人者。本書は『大正期の家族問題』『昭和前期の家族問題』に続く完結編。
終戦直後は食糧難とともに結婚難でもあった。世話を焼いてくれた地域、親戚づきあいが戦争で壊されたからだ。そこで盛んだったのが「集団見合い」というのだから現代の“婚活”を重ねてしまう。渋谷にはラブレターを代筆する店のある恋文横丁もあった。昭和60年代になると、結婚しない女・したくてもできない男が増えていくが、ある地域は「結婚と無縁」だった。その分析は、今の社会に大いに参考になりそう。
ラジオドラマ「君の名は」、小津安二郎の映画「東京物語」などを、社会状況に照らして鑑賞するひと味違った文芸評も楽しい。昭和生まれなら「そんな時代だったなあ」とほろ苦く振り返ることができる。(真)
−−「今週の本棚:昭和後期の家族問題=湯沢雍彦」、『毎日新聞』2012年10月21日(日)付。
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