覚え書:「ひと 大作「3・11鎮魂と復活」に願いを込めた前衛書家 千葉蒼玄さん」、『毎日新聞』2013年01月01日(日)付。




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ひと
大作「3・11鎮魂と復活」に願いを込めた前衛書家
千葉蒼玄さん(57)

 びっしりと書き込まれた文字が迫ってくる。高さ3メートル60センチ×幅9メートル。東日本大震災からの再生への願いを込めた。昨年10月に完成した。
 3・11は仕事で東京にいた。やっとのことで自宅のある宮城県石巻市に戻ると、惨たんたる光景が広がっていた。家は無事だったが、代表作をはじめ作品の大半を津波で失った。「押し寄せるように黒い壁が来た」。門人から「その時」の恐怖を聞かされた。
 津波の跡に立ち、目を奪われたものがある。新聞紙だ。「家の壁に新聞紙がへばりついていた」。流されてもへばりつくその姿に再生への力を感じ、これを書こうと決めた。
 「11日午後2時46分ごろ、東北地方で非常に強い地震があり……」。震災発生から1カ月の毎日新聞と地元紙の記事。これを昨年の元旦から書き連ねていった。襲いかかる津波と亡くなった人たちを思いながら。書いても書いても尽きない。「震災を伝える新聞の情報量の多さにも驚いた」という。
 震災の8カ月跡に家も失った。が、多くの門人に囲まれ悲嘆したふうはない。
 「流された作品以上のものを書こうと思っているから、意気消沈はしていない。石巻に住んでいる者が(被災地のことを)発信しなきゃならないし、伝えることは芸術家の使命ですから」
 作品は4〜16日に開かれる「TOKYO書2013」(東京都美術館)で展示される。
ちば・そうげん 玄穹社(げんきゅうしゃ)主宰。書道芸術院事務局長として本部のある東京と石巻を往復する。毎日書道会評議員
    −−「ひと 大作「3・11鎮魂と復活」に願いを込めた前衛書家 千葉蒼玄さん」、『毎日新聞』2013年01月01日(日)付。

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