覚え書:「出版:生活保護、実態知って 元受給者が経験を本に」、『毎日新聞』2013年01月04日(木)付(東京夕刊)。




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出版:生活保護、実態知って 元受給者が経験を本に
毎日新聞 2013年01月04日 東京夕刊

 「生活保護制度は人間をダメにする制度ではありません」−−。生活保護への風当たりが強まる中、元受給者が自身の経験をありのままにつづった「生活保護とあたし」(あけび書房)が昨年12月に出版された。著者の和久井みちるさんは「私たちを怠け者と思う人にこそ読んでもらえれば」と力を込める。

 和久井さんは首都圏在住の50代女性。夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れ、うつ状態で思うように働けないまま貯金が底をついたため、07年から3年半にわたって生活保護を受給した。今はフルタイムの職を得て生活保護から脱却している。

 貧困問題の市民運動で発言していたことをきっかけに1年前、生活保護の実態を紹介してみないかと出版社側が打診。和久井さんは「受給のさなかにある人は『自分の話なんて聞いてもらえない』と思い、声を上げづらい。私の立場ならば書ける」と執筆に踏み切った。

 お笑い芸人が生活保護を受けている母親の扶養義務を果たしていないと批判された問題をきっかけに、受給者はパチンコや酒に溺れているという偏見が増幅。和久井さんはそんなイメージを何とかしようと、週末になると夜通しパソコンに向かい、完成を急いだ。

 著書では、生活保護の申請から就労指導に至るまで、自治体担当者とのやりとりを再現し、申請に訪れたのに体よく追い返される「水際作戦」など厳しい対応も珍しくないことを指摘。受給の事実を知らない知人から心ない言葉をぶつけられたことにも触れた。当時の生活費は月約7万円。エアコンを節約して熱中症になったこともあったが、計画的に節約して友人と外食できるとも記した。

 出版直後に行われた衆院選では保護費の10%カットや現物給付の導入など、制度の抜本的見直しを掲げた自民党が大勝。和久井さんは制度改革の行方に気をもみながら「生活保護は大切な権利。実態をよく知らない人に読んでほしい」と話す。

 支援者や当事者らでつくる生活保護問題対策全国会議の小久保哲郎弁護士は「当事者が実態をつづった単著はおそらく初めて。深刻な話を軽いタッチで読みやすく仕上げた」と評価する。四六判、176ページ。1470円。【遠藤拓】
    −−「出版:生活保護、実態知って 元受給者が経験を本に」、『毎日新聞』2013年01月04日(木)付(東京夕刊)。

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生活保護とあたし
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