覚え書:「今週の本棚:〈3・11〉忘却に抗して 識者53人の言葉=毎日新聞夕刊編集部・著」、『毎日新聞』2013年01月06日(日)付。




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今週の本棚:〈3・11〉忘却に抗して 識者53人の言葉
毎日新聞夕刊編集部・著
現代書館・1785円)

 1923年の関東大震災直後、総合雑誌『改造』は、同年10月号の表紙に「大震災号」と刷り込んだ。山本有三武者小路実篤ら時代を代表する作家が、この天災を生々しい筆致で論じた。たとえば芥川龍之介渋沢栄一らが唱えた〈調子づいた日本人に天が下した警鐘〉だとする天譴論に対して、こんな「不公平」な天罰などない、と憤った。、同時代の知識人が震災とどう向き合ったのかを、残さなくてはならない−−。そんな編集者の気迫が伝わってくる。
 東日本大震災から約1年間にわたって、震災、原発事故について知者たちの問い続けた記事をまとめた本書も、この『改造』特集号と同じベクトルの延長上にある。登場者は、高村薫、秋山駿、金子兜太梅原猛の各氏をはじめとする文学者に加え、有馬朗人小柴昌俊の両氏ら科学者もいる。いずれも日本の「いま」を代表する知性だ。また昨年亡くなった吉本隆明藤本義一の両氏のまとまったインタビューとしては最後のものであり“遺書”となった。
 事態が激しく動いていた時期での「言葉」という生々しさに加え、識者たちの思索の姿もまた、後世への貴重な記録となっている。
    −−「今週の本棚:〈3・11〉忘却に抗して 識者53人の言葉=毎日新聞夕刊編集部・著」、『毎日新聞』2013年01月06日(日)付。

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