覚え書:「今週の本棚:シュトルム名作集 VI=テーオドール・シュトルム・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。
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今週の本棚:シュトルム名作集 VI
テーオドール・シュトルム・著
(三元社・5460円)
「シュトルム名作集」全6巻が完結した。ドイツ国外では初の全集誕生であり、記念碑的な偉業と言っていい。19世紀ドイツの作家・詩人、テーオドール・シュトルム(1817〜77)が、わが国で今なお広く受けいれられている証しだ。
シュトルムといえば、『みずうみ』『白馬の騎手』の文庫本も刊行され、読み続けられている。青春時代にその内の一冊を手に取り、あふれんばかりのリリシズムや、木彫り彫刻のように素朴ながら力強いストーリーテリングに、強く惹きつけられた方も少なくないだろう。
短編小説の大家としての側面が強調されがちなシュトルムだが、実はゲーテやハイネ、そしてメーリケらにつらなる抒情詩人でもあった。文豪トーマス・マンもシュトルムの詩を深く愛し、名作『トニオ・クレエゲル』の中で引用している。
掉尾を飾る第6巻は、主に詩人としてのシュトルムにささげられている。亡き妻への憶いを詠った「深い影」から風刺的な「国家年鑑より」まで作風は多岐にわたる。その全容が加藤丈雄氏の名訳で日本の読者に届けられることは喜ばしい。=日本シュトルム協会編訳(広)
−−「今週の本棚:シュトルム名作集 VI=テーオドール・シュトルム・著」、『毎日新聞』2013年03月17日(日)付。
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