覚え書:「書評:歌は季につれ [著]三田完 [評者]三浦しをん(作家)」、『朝日新聞』2013年05月12日(日)付。
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歌は季につれ [著]三田完
[評者]三浦しをん(作家) [掲載]2013年05月12日 [ジャンル]文芸
■口ずさめば心にほのかな明かり
著者の三田完氏は、作家であり俳人でもある。もともとはテレビの音楽番組を作っていたらしい。阿修羅像なみに多様な顔を持つ男……!
よって、このエッセー集では、折々の出来事や風物から連想される歌謡曲と、それに呼応するような名句と、著者が見聞きしたり考えたりした事柄とを味わえる。一粒で三度おいしい。
著者がともに仕事をした阿久悠や美空ひばりの姿。「雪の降る街を」や「渚(なぎさ)のはいから人魚」といった、人々に愛される歌にまつわる思い出。ちなみに、「渚のはいから人魚」に添えられるのは橋本薫の句、「流れ藻や涼しかるらん人魚の血」だ。しびれる。
連載途中で東日本大震災が起きるが、著者の筆致は上擦らず荒ぶらない。俳句や歌謡曲といった、ひとの心から生じた「歌」はすべて、楽しいときもつらいときも私たちのそばにあり、口ずさめば心にほのかな明かりを灯(とも)してくれる。本書もまた、そういう「歌」のようなエッセー集だ。
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幻戯書房・2310円
−−「書評:歌は季につれ [著]三田完 [評者]三浦しをん(作家)」、『朝日新聞』2013年05月12日(日)付。
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