書評:野本三吉『子供観の戦後史 増補改訂版』現代書館、2007年。



野本三吉『子供観の戦後史 増補改訂版』現代書館、読了。本書は『戦後児童生活史』『近代日本児童生活史序説』をまとめた著者による児童観の変遷史、児童思想史。大人は子供をどのように見てきたのか−−。ことあるたびに人は「子供が変わった」というがそれは「子供観」が変わったのである。

アリエスなど子供研究を踏まえ、今日のいじめや子供の権利条約に至るまでの戦後50年の軌跡を辿る。「戦争孤児はいまその岐路に立っている。この岐路はそのまま大きく言えば人類の福禍の岐路になる」(永井隆)。著者の思想的原点が戦争と原爆というのが印象的。そしてこの研究原点のつきけた問題は未だ未解決のまま、トピックに右往左往するのが現状であろう。

五百頁を超える大著ながら、子供観の変遷を辿る本書は読み応えのある刺激的な労作。初等教育に関わる人間には必須の一冊となるし、幅広く読まれて欲しい一冊だ。


子ども観の戦後史


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子ども観の戦後史
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野本 三吉
現代書館
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