覚え書:「過熱する『憎悪』:識者に聞く 排除は国民の仕事−−フリーライター・赤木智弘さん」、『毎日新聞』2013年06月19日(日)付。



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過熱する「憎悪」:識者に聞く 排除は国民の仕事−−フリーライター赤木智弘さん
毎日新聞 2013年06月19日 東京朝刊

 在日コリアンを汚い言葉で攻撃する「ヘイトスピーチ」の問題は、16日に東京・新大久保で行われたデモで「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と反対派から逮捕者を出す事態に発展した。ヘイトスピーチはなぜ過激化したのか。また私たちはどう考えればよいのか。識者に聞く。

 経済成長が終わり、非正規雇用の増加などで閉塞(へいそく)感が強まる中、「在日」を標的とする在特会の運動が、鬱積している不満のはけ口として一部で共感を呼んでいる。彼らがよりどころとする「民族」「国籍」は何の苦労もなく手に入り、揺るがない。第一次世界大戦後、超インフレに苦しみ没落していくドイツ人中間層が、すべてをユダヤ人の責任に帰すナチスを支持した状況とも重なってくる。

 とはいえ、彼らの言葉はどんなに汚くても「言論」である。ヘイトスピーチを法律で禁じようという議論もあるが、言論に法規制はなじまない。ヘイトスピーチを「国籍や性別など固有の属性に基づく差別」などと法で厳密に定義すれば、反対派による暴言は「定義に外れる」として許容されかねない。一方、定義をあいまいにしておけば、国家による表現の自由への際限ない介入を許す。

 今の日本人は職場と家庭に引きこもり、その外側で起きている現象への関心や想像力を失っている。地域や社会で人間関係を強め、属性の異なる人々と付き合っていく中で、差別を許さない言論を地道に鍛えていくほかない。ヘイトスピーチを排除するのは、国家権力ではなく国民の仕事なのである。(談)

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 ■人物略歴

 ◇あかぎ・ともひろ

 1975年栃木県生まれ。論文「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳、フリーター。希望は、戦争。」が話題に。著書に「若者を見殺しにする国」。
    −−「過熱する『憎悪』:識者に聞く 排除は国民の仕事−−フリーライター赤木智弘さん」、『毎日新聞』2013年06月19日(日)付。

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http://mainichi.jp/select/news/20130619ddm041040184000c.html





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