覚え書:「今週の本棚・新刊:『第一回普選と選挙ポスター』=玉井清・著」、『毎日新聞』2013年06月23日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『第一回普選と選挙ポスター』=玉井清・著
毎日新聞 2013年06月23日 東京朝刊
(慶應義塾大学法学研究会・6930円)
選挙運動の候補者と党首のツーショット写真は今に始まったことではない。85年前の第1回男子普通選挙(衆院選)でも野党・民政党の候補は党首・浜口雄幸とのかかわりをさかんにポスターでアピールした。
片や与党・政友会の党首・田中義一は不人気である。政友会の候補の中には代わりに人気のあった犬養毅をポスターに用いる者もいた。有権者が一挙4倍になった普選では初めてポスターやビラが選挙運動に大量使用され、全国の塀や電柱は2色刷りのポスターで埋め尽くされた。
慶応義塾図書館に眠っていた当時のポスターなどから、イメージ選挙のはしりとなった第1回普選の諸相を読み解いたこの書である。2大政党はポスターに風刺漫画も用いて互いを「大道の邪魔もの」「私利党略」と罵(ののし)り合った。選挙費用の乏しい無産政党は共通意匠のポスターで候補者名を差し替えて用いた。民衆の本格的政治参加の熱を伝えるポスターや資料は、やがて来る政党政治の没落の予兆も映し出していた。
昭和のモダニズム漂うバラエティー豊かなポスターによって初めて視覚化された政治である。口絵の豊富なカラー図版が楽しい。(時)
−−「今週の本棚・新刊:『第一回普選と選挙ポスター』=玉井清・著」、『毎日新聞』2013年06月23日(日)付。
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http://mainichi.jp/feature/news/20130623ddm015070046000c.html
第一回普選と選挙ポスター―昭和初頭の選挙運動に関する研究 (慶應義塾大学法学研究会叢書)
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