書評:伊藤邦武『物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために』中公新書、2012年。




伊藤邦武『物語 哲学の歴史 自分と世界を考えるために』中公新書、読了。「人間の誰もが世界と向き合い、自分の生を意味を顧みるときに、どうしても問わずにはいられない、もっとも根本的な問いを深く考え、その答えを模索しようとする知的努力」が哲学。哲学史を一つのストーリーとして描き出す

筆者は西洋哲学二千余年の歴史を、「魂の哲学」(古代・中世)、「意識の哲学」(近世・近代)、「言語の哲学」(20世紀)、「生命の哲学」(21世紀へ)と分類、そのパラダイムシフトを追跡する。魂から意識へ。意識から言語へ、そして生命へ。

西洋哲学の源流は魂への配慮に始まる。そしてどう認識し、言語化するのかという営みは、魂そのものとしての生命に注目せざるを得なくなる。自分とは何か?とは、世界と対話した上で自分に戻るからするから、哲学のストーリーとは再帰的といってよい。

本書は新書サイズで西洋哲学史の流れだけでなく、代表的な考え方を平明かつコンパクトにまとめようとする大胆な試みだが、筆者の意図はほぼ成功しているといえよう。「自分と世界を考えるために」(副題)一助となる一冊である。







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