覚え書:「今週の本棚・新刊:『私の最高裁判所論 憲法の求める司法の役割』=泉徳治・著」、『毎日新聞』2013年07月14日(日)付。



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今週の本棚・新刊:『私の最高裁判所論 憲法の求める司法の役割』=泉徳治・著
毎日新聞 2013年07月14日 東京朝刊

 (日本評論社・2940円)

 日本の司法は長年、三権分立の中で消極主義だといわれてきた。それは、最高裁が示した法令違憲判断が戦後わずか8件にとどまることにも現れている。最高裁判事として6年余の在任中、25件の反対意見を書いた著者が、「人権を守る役割を、司法はもっと認識すべきだ」と、司法の機能強化への願いを込めた。

 戦前、司法権の独立を確立するために激論を戦わせた判事らの気骨に始まり、戦後憲法下で発足した最高裁違憲審査権を担うに至るまで、裁判所の歴史が古書などから掘り起こされ、歴史書としても興味深い。先人の苦闘を引き継いだ最高裁が、いかに違憲審査権を行使すべきか、未来の法曹養成はどうあるべきか、などのテーマにも触れ、現在の司法の課題も浮かび上がる。

 少数意見も積み上げれば未来の多数意見につながるとの考えから、著者は裁判官出身者では珍しく「もの言う判事」であり続けた。その個別意見も紹介している。中でも「1票の格差」訴訟では、合憲とする多数意見に対し、「違憲だ」と反対意見を書き続けた。それは、昨年の衆院選を巡り、下級審で相次いだ違憲判断となって結実している。(石)
    −−「今週の本棚・新刊:『私の最高裁判所論 憲法の求める司法の役割』=泉徳治・著」、『毎日新聞』2013年07月14日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20130714ddm015070019000c.html





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