書評:澁谷知美『立身出世と下半身 男子学生の性的身体の管理の歴史』洛北出版、2013年。




澁谷知美『立身出世と下半身』洛北出版、読了。なぜ少年は性から遠ざけられるのか。その起源は明治中葉に存在する。国家に有益な立身出世を目指す刻苦勉励のために性的品行は慎むべし。少年を取り巻く性的環境は学校、警察、社会を挙げて一元化されてゆく。本書は豊富なエピソードでその軌跡を辿る。

性的エネルギーは「男らしさ」の表象であるにもかかわらず学生に対しては封印の対象となったが、それは国家にとって「性」が有害な場合の禁忌。しかし、国や企業に役に立つとあれば性的行為が逆に公認され、奨励されることにもなる。

「生産する身体」に対して「性的な身体」が従属させられて来たのが近代社会の「〜らしさ」という幻想であり、国家がそれを構想する。常に矛盾にさらされてきた男性の性的身体に関する言説を材料に、生-権力の動態を明らかにする好著。











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立身出世と下半身―男子学生の性的身体の管理の歴史
澁谷 知美
洛北出版
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