書評:上丸洋一『「諸君!」「正論」の研究 保守言論はどう変容してきたか』岩波書店、2011年。




上丸洋一『「諸君!」「正論」の研究 保守言論はどう変容してきたか』岩波書店、読了。本書は戦後保守の代表的オピニオン雑誌を材料に、戦後の言論・思想状況の変遷を明らかにする。核武装論や靖国東京裁判のほか、それぞれの創刊者の対比(池島信平鹿内信隆)など話題は多岐にわたる。

興味深いのは、二誌にも「まとまな」時代があったこと。『諸君!』は09年休刊になったが、ここ二十年来の論調は、論敵への無理筋ともいえる根拠なき過剰な批判が殆どで、もともとあった柔軟性とは対照的。著者は休刊は「堕落の果て」と批判する。

ためにする過剰な噛みつきは、やがてバランスを欠き、「オピニオン」の看板とは裏腹に下品な雑誌に成り下がった。しかしこの二誌の軌跡は雑誌空間に限定されるものではなく、今やちまたに溢れている。安倍首相と同年の著者の描く本書は時代の鏡だ。







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