書評:樋口陽一『いま、「憲法改正」をどう考えるか 「戦後日本」を「保守」することの意味』岩波書店、2013年。




樋口陽一『いま、「憲法改正」をどう考えるか 「戦後日本」を「保守」することの意味』岩波書店、読了。安倍首相が力をいれる憲法改正と、なし崩し的にその雰囲気に呑み込まれる世相の何が問題なのか。本書は明治以来の立憲政治と憲法史の伝統から、その問題点を撃つ。要を得た警世の一冊。

「自国の先達の残した最良の過去を−−その挫折の歴史とともに−−記憶し、それを現在に生かそうとしないことを、『保守』と言えるだろうか」。立憲主義と天賦人権論の否定にみられるエスノセントリズムは、保守とは逆の幼稚な根無し草といってよい。

短著ながら、自民党憲法草案の腑分けと問題の指摘は的確であり、「戦後レジームからの脱却」は、戦後日本だけでなく、近代日本の伝統と挑戦の否定でもある。酷評が多いが、現在の立ち位置を確認し、明日を展望する一冊。おすすめです。

http://book.asahi.com/booknews/interview/2013061200002.html

http://book.asahi.com/reviews/column/2013063000002.html


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