覚え書:「発言 海外から 文豪のすべて読んで=フョークラ・トルスタヤ」、『毎日新聞』2013年10月23日(水)付。



        • -

発言 海外から
文豪のすべて読んで
フョークラ・トルスタヤ
トルストイ博物館職員でトルストイの玄孫

 今年6月からロシアの文豪レフ・トルストイ(1828〜1910年)の全著作90巻を電子ファイル化し、インターネットのサイト(www.tolstoy.ru)で無料公開するプロジェクトを始めた。
 トルストイは「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「復活」などで有名だが、日記や手紙はほとんど知られておらず、出版物は図書館に眠っている。人気作品だけでなく、全ての作品を自由に読めるようにしようと発案した。電子化することで、電子ブックやスマートフォンで読書する若者にも受け入れてもらえると考えた。
 電子化はロシアの国立トルストイ博物館とIT企業「ABBYY」社が協力した。4万6000ページある全集をスキャンし、テキストに自動変換したものを原本と照合しながら校正していく。すべての作品がネット上でできるのが特徴だ。
 校正作業のボランティアを呼びかけたところ、ロシアをはじめ旧ソ連諸国や米国、欧州、アジアなど49カ国から3200人が参加してくれた。世界中にトルストイのファンがいかに多いかを裏付けている。1人で2190頁を校正した男性もいた。
 トルストイは生前、原稿料の受け取りを拒否した。作品集にも「無償で転載可能」と書かれている。つまり著作権を放棄していたわけで、ネットでの無料公開はトルストイの「遺言」であり、我々がそれを実行しているのだ。
 ロシア語のオリジナルだけでなく、各国語の翻訳も載せたいが、翻訳者の著作権問題がある。我々のプロジェクトが高く評価され、多くの人が閲覧するようになれば、外国の翻訳者も無料で公開することを望むかもしれない。
 トルストイの作品には独創的で斬新な言葉が多い。このため校正は正確を期すため3段階で行っている。作業は予想を上回る速さで進んでおり、これまでに7巻分をサイトにアップし、自由にダウンロードできるようになっている。来年の9月9日のトルストイの誕生日までには全90巻の公開が完了するだろう。
 将来はサイトにトルストイにまつわるあらゆる情報を収集し、保存させたい。トルストイを「偉大な作家」ではなく、「普通の人」として見ることで、より深く理解できるようになるはずだ。【構成・田中洋之】
    −−「発言 海外から 文豪のすべて読んで=フョークラ・トルスタヤ」、『毎日新聞』2013年10月23日(水)付。

        • -



Лев Толстой



Resize102


Resize1638