日記:無人による支配


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 官僚制とはすなわち、一者でもなければ最優秀者でもなく、また少数者でもなければ多数者でもなく、だれもがそこでは責任を負うことのできない官庁の匿名のシステムであり、無人による支配とでも呼ぶのが適切であるようなものである。
    −−ハンナ・アーレント(山田正行訳)『暴力について 共和国の危機』みすず書房、2000年、127頁。

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久しぶりにアーレントの時事評論を引っ張り出して読んでいたら、権力(暴力)に対峙するにあたっての市民的不服従の挑戦にひとつの範を見出していたことに驚いたのですが、権力(暴力)についての描写を読んでいると、カフカの長編小説『城』を想起した。

いつまでたっても城の中に入ることのできない測量技師Kをとりまく環境の諸力とは、人間には理解できない権力であり、それはハデイガーのいう「技術の支配」のことであり、圧倒的な力なのに、誰もが責任を取らないそれは、アーレントのいう「無人による支配」のことなのだろう。

その「無人の支配」とは、高度に発達した官僚制抜きには語れない。








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