覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:意欲的な人材の育成阻害 和歌山大学長・山本健慈さん」、『毎日新聞』2013年12月31日(火)付。


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特定秘密保護法に言いたい:意欲的な人材の育成阻害 和歌山大学長・山本健慈さん
毎日新聞 2013年12月31日 東京朝刊

山本健慈さん

 ◇山本健慈さん(65)

 和歌山大学は「生涯あなたの人生を応援します」というメッセージを掲げている。学生たちには生涯、好奇心を持って自主的、意欲的に生きてほしいと思っている。

 好奇心の行き着く先は分からない。ただ、歴史に名を残す優れた研究者の多くは、既存の研究や社会に疑問を持ち、現状を変えようと発想したところから出発している。

 何が秘密かも知らされない特定秘密保護法は「どこに地雷が埋まっているか分からない」という恐れを抱かせ、何かを知ろうとする若者たちの意欲を萎縮させる制度だ。意欲的な人材を育てることは社会の要請でもある。それを阻害するような制度には、大学の経営を任されている者として異議を唱えたい。

 生涯学習の研究者としても疑問がある。

 すべての市民に学ぶ機会を保障する制度づくりは世界の潮流で、政府も大学がその中心となることを求めている。しかし、市民に学習の自由が保障されなければ、絵に描いた餅となる。

 東日本大震災の後「地域の絆」が強調されるが、原子力発電所への賛否をめぐる分断のように、地域は本来、価値観の対立のるつぼのようなところだ。住民が自由に学習して自由に発言し、対立する他者に敬意を払って合意点を見つけることでしか、本当の絆は生まれないだろう。

 特定秘密保護法は「触れてはならない」「話してはならない」という領域を生む制度であり、社会の発展とは根本的に両立しない。【聞き手・日下部聡】=随時掲載

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 ■人物略歴

 ◇やまもと・けんじ

 1948年生まれ。専攻は社会教育・生涯学習論。2009年から現職。中央教育審議会臨時委員。
    −−「特定秘密保護法に言いたい:意欲的な人材の育成阻害 和歌山大学長・山本健慈さん」、『毎日新聞』2013年12月31日(火)付。

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