覚え書:「靖国の英霊が望むことは?」、「靖国参拝、安倍首相の暴走」、「慎重さ欠いた首相の靖国参拝」、「靖国参拝、政治家は反省を」、『毎日新聞』


いわゆる「声」の欄って、基本的には両論併記になることがあります。例えば、特定秘密保護法でも、6対1ぐらいで、6反対、1賛成という具合で。 しかし、靖国参拝に関しては……その根拠は様々なアプローチがありますが……参拝賛成論はいまのところ発見できません。

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みんなの広場:靖国の英霊が望むことは?
65(熊本県荒尾市
毎日新聞 2014年01月12日


 安倍晋三首相の靖国参拝が国の内外に波紋を広げています。靖国問題は多くの場合、戦争に生き残った者の責任、義務の立場で語られます。国会議員の場合は票田である遺族会への「参拝しました」との報告がわりにマスコミに報道させているように見えます。私は靖国神社に眠る英霊の立場になって考えるため、特攻隊員の遺稿集を読み返してみました。

 その一節に「有能な指導者を欠いたために喧騒(けんそう)な世を……」とあります。自分の意に反して戦場に倒れた人々は、無能な指導者を恨んで死んだと思います。

 そして今、自分たちが土となった国の人々の反感をかってまで参拝してくれることを望んでいるとは思えません。「天皇陛下万歳」と絶叫して死んだ人々は、自分を戦場に送った者を合祀(ごうし)して、天皇陛下が参拝できない状態を放置している政治家の参拝を望んでいるでしょうか。靖国の英霊が望むのは家族、友人、知人の参拝であり、平和であり、忘れないことだと思います。
    −−「みんなの広場:靖国の英霊が望むことは?」、『毎日新聞』2014年01月12日(日)付。

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みんなの広場:靖国参拝、安倍首相の暴走
67(埼玉県鴻巣市
毎日新聞 2014年01月12日 東京朝刊


 安倍晋三首相も首相就任当初は、“安全運転”を心がけ謙虚な姿勢も感じられた。しかし、参院選で大勝してからは「自民一強」の慢心やおごりがその表情からもうかがえ、特定秘密保護法強行採決靖国神社参拝など、一転「暴走」し始めた。

 「満ちれば欠ける」。権力者にとって得意の絶頂でおごり高ぶることこそ、没落の始まり、と古人は明察している。国の命による戦死者を、指導者が追悼し慰霊するのは当然である。ただ、靖国神社にはA級戦犯が合祀(ごうし)されている。日本軍国主義の犠牲となった中国、韓国をはじめ近隣諸国から「侵略戦争を正当化するのか」という反発が出て当然だ。

 いたずらに戦争を長引かせた軍部の責任は重く大きい。広島、長崎の原爆の惨禍を含め戦没者は数百万人にのぼる。首相はこの事実をどう受け止めているか。
    −−「みんなの広場:靖国参拝、安倍首相の暴走」、『毎日新聞』2014年01月12日(日)付。

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みんなの広場:慎重さ欠いた首相の靖国参拝
79(京都府舞鶴市
毎日新聞 2014年01月12日 東京朝刊


 先の大戦において特攻隊員として散華した者の一遺族です。

 経済対策を柱とした政策に国民の多くの支持を得て、積極的平和主義を提唱する首相が靖国に参拝しました。戦没者に対する尊崇の念として、その御霊(みたま)を哀悼する心情はわれわれ庶民にも理解できます。しかしアジア諸国、とりわけ中韓との関係改善を模索する動きが内外で出始めた時期に突如として行われた靖国参拝は、首相としては不戦への決意を表す行為であったにせよ、外交面に大きな影響を与えてしまったことは否めません。

 自らの権力を誇示したいという思いの表れなのか、演出されたパフォーマンス、派手な振る舞いは慎むべきです。真に私人としての行動ならば、もっと謙虚な姿勢で対応すべきだったのではないでしょうか。思いつきで独善的な参拝は残念でなりません。戦争を知らない世代の首相の歴史観も独りよがりでなく、広い視野で究めるべきだと考えます。
    −−「みんなの広場:慎重さ欠いた首相の靖国参拝」、『毎日新聞』2014年01月12日(日)付。

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みんなの広場:靖国参拝、政治家は反省を
91(千葉県香取市
毎日新聞 2014年01月13日 東京朝刊



 5日本欄の「首相の靖国参拝国益損なう」に全く同感です。私が海軍に関係した折、懇意にしていたS兵曹長が南方へ転属するにあたり、こう述べました。「私は死にに行くのだからめでたくない。自分は、水兵の頃から遠洋航海で米国に行っている。米国であの立派な橋を見ただけでも、日本は到底及ばない」

 私は、その後、陸軍に入り、将校学生として「戦車」について学びました。教官は米国の戦車の優秀さを述べて、敗戦を予期していました。1945(昭和20)年3月10日の東京大空襲では、言問橋の橋上などは死骸の山で、人体などはまるで消し炭の惨状でした。それでも「本土決戦だ。竹やり戦術だ」と敗戦を認めず、ついに原爆の悲劇を招いたのです。数多くの兵士を「無駄死に」させたのです。私の多くの友人は、無駄死にをさせた指導者と一緒に靖国神社に祭られて今、どんな気持ちでしょうか。昭和天皇靖国参拝をやめられたと聞いております。政治家諸氏の反省を望みます。
    −−「みんなの広場:靖国参拝、政治家は反省を」、『毎日新聞』2014年01月13日(月)付。

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