覚え書:「今週の本棚・新刊:『月日の残像』=山田太一・著」、『毎日新聞』2014年01月19日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『月日の残像』=山田太一・著
毎日新聞 2014年01月19日 東京朝刊
(新潮社・1680円)
テレビの人気脚本家というと派手な印象があるが山田太一はむしろ地味。好んで表に出ないようにしているところがある。
大学を卒業してから松竹に入社。助監督として木下恵介作品に八本ついた。仕事柄、人前で大声を出さなければならないが、これが苦手だったという。人と騒ぐのも苦手。
多くの助監督が監督を目ざすなかで脚本家の道を選んだ。一人で出来るから。「一人でいられて好きな映画に関われるのは、シナリオライターしかないではないか」
浅草の生まれというのは意外。家は食堂をしていた。それでいて「地縁共同体で育ったという記憶がほとんどない」と孤高。
戦時中、店は強制疎開で壊され、やむなく湯河原に移った。そこで母親は敗戦直前に病死する。また三人の兄を肺結核で亡くしている。
あまり子ども時代のことを語らない山田太一だが、死を身近に見て育ったことが分かる。山田ドラマの底に見え隠れする人間への厳しい目はこの体験ゆえかもしれない。
ずっと東京ではなく川崎市の溝の口のはずれに住む。東京に出て光を浴びたくないからという。(川)
−−「今週の本棚・新刊:『月日の残像』=山田太一・著」、『毎日新聞』2014年01月19日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140119ddm015070019000c.html