覚え書:「今週の本棚・新刊:『神社の起源と古代朝鮮』=岡谷公二・著」、『毎日新聞』2014年01月19日(日)付。


        • -

今週の本棚・新刊:『神社の起源と古代朝鮮』=岡谷公二・著
毎日新聞 2014年01月19日 東京朝刊

 (平凡社新書・840円)

 神社というと、日本固有の存在と考えやすい。そのせいか、神社のもつ外来的要素を探る研究は異端視されがちだ。著者は神社信仰の成立という最も根本的な部分に古代朝鮮、中でも三国の一つ、新羅(しらぎ)の影響があるとの仮説を立てる。タブーを超えていくスリリングな力作。

 渡来人の痕跡を残す神社は、実は珍しくない。問題は、日本と朝鮮の、どちらがどちらに影響を及ぼしたかの点だ。著者はまず近江(滋賀県)の渡来系神社が例外なく古いという事実を前に、「渡来人たちが、倭人の神社にならって自分たちの神社を祀(まつ)ったのではない」と確信する。

 奈良、出雲……と探査を深め、クライマックスは韓国・慶州への旅。目的は、神樹が形づくる「堂(タン)」と呼ばれる聖地だ。このかつての新羅の都で、建物がなくて森だけの堂に出合う。神社も元々は社殿がなく、山や森、巨樹、巨岩に降臨する神を祭ったとするのが通説だ。日本の古い信仰と同じ形の堂の存在は、神社の起源が新羅にあることを示すのか……。

 軽々な結論は避けたいが、著者の実地踏査は説得力がある。近年、韓国の研究者も関心を持ち始めたといい、今後の展開が興味深い。(和)
    −−「今週の本棚・新刊:『神社の起源と古代朝鮮』=岡谷公二・著」、『毎日新聞』2014年01月19日(日)付。

        • -



http://mainichi.jp/shimen/news/20140119ddm015070010000c.html





Resize0060

神社の起源と古代朝鮮 (平凡社新書)
岡谷 公二
平凡社
売り上げランキング: 10,953