覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:報道の自由、読者と共に守れ−−ジャーナリスト・むのたけじさん」、『毎日新聞』2014年01月23日(木)付。
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特定秘密保護法に言いたい:報道の自由、読者と共に守れ−−ジャーナリスト・むのたけじさん
毎日新聞 2014年01月23日 東京朝刊
(写真キャプション)ジャーナリスト・むのたけじ氏=東京・内幸町の日本記者クラブで1月14日、臺宏士撮影
◇むのたけじさん(99)
終戦以前の日本には治安維持法や国家総動員法、軍機保護法があって報道の自由、知る権利はなかった。国家の命令に従わないと「非国民」のレッテルを貼られたり「国賊」とののしられたりした。お互いが監視役になって縮こまり、家庭内にまで亀裂が入った。軍事情報を厳格に管理しようとする今回の特定秘密保護法は、これらの法律と同じ根を持つ。
安倍政権が唱える「積極的平和主義」の根底には、戦争の準備を進めるという考え方がある。特定秘密保護法を作ったのは「政府は戦争の準備をしていない」と国民にうそをつき、知る権利に鎖をつけるためではないか。第三次世界大戦を誘発し、再び人類全体に悲しみや苦しみを与える動きは、決して許すわけにはいかない。
陸軍青年将校らが起こした「2・26事件」(1936年)では朝日新聞社も襲撃された。活字ケースをひっくりかえされる程度の被害ですんだのは、軍人も「新聞の後ろにいる民衆を敵には回せない」と考えたからだ。残念ながら当時の新聞はこれを感じ取れず、毅然(きぜん)として戦争に反対する論陣を張れなかった。
特定秘密保護法で怖いのは戦前同様の自主規制だ。報道人は読者を「報道の自由を守る仲間」だと思ってほしい。そうすれば、大きな力が生まれてくる。国民全体に自分たちの問題として関心を持ってもらうよう対話を地道に広げていくことが、ヒューマニズムとデモクラシーの根づいた社会への最短の道だ。命ある限り反対運動を続けたい。【聞き手・臺宏士】=随時掲載
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■人物略歴
◇武野武治
元朝日新聞記者。敗戦後退社し秋田県横手市で週刊紙「たいまつ」(48−78年)を発行。近著に「99歳一日一言」。
−−「特定秘密保護法に言いたい:報道の自由、読者と共に守れ−−ジャーナリスト・むのたけじさん」、『毎日新聞』2014年01月23日(木)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140123ddm041010146000c.html