覚え書:「今週の本棚・新刊:『福祉と贈与 全身性障害者・新田勲と介護者たち』=深田耕一郎・著」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『福祉と贈与 全身性障害者・新田勲と介護者たち』=深田耕一郎・著
毎日新聞 2014年01月26日 東京朝刊

 (生活書院・2940円)

 全身性障害者、故新田勲を7年半介護してきた研究者が、広い意味での「福祉」のあり方を論じた。現場の生々しさを反映しつつ、障害者運動史やモース、今村仁司らの概念も絡めて思索を深めた労作である。

 障害者介護に限らず、マイノリティーの当事者にマジョリティーがどう関係するかは、長年、さまざまな社会運動で課題となってきた。1970年代以降、マジョリティーが従来、マイノリティーを抑圧してきたことへの負債感を利用した「連帯」の動きが、種々の運動で一つの定型となった。だが、それはしばしば、運動に関わる人を疲弊させてもきた。

 本書は、70年代以前、健常者の「善意」による障害者福祉が、結局障害者を「同じ人間」扱いできなかった歴史や、70年代以降の運動の成果と限界を踏まえつつ、新田と周囲が実現した、独特な関係性を描く。それは、家族などの愛情に負担を丸投げするのでも、単なる介護労働に福祉を切り縮めるのでもない、絶妙な相互贈与の関係だった。障害者福祉や社会運動関係者にはもちろん、より広く、家族や友人との関係に行き詰まった人にも、多くのヒントを与えてくれそうな本だ。(英)
    −−「今週の本棚・新刊:『福祉と贈与 全身性障害者・新田勲と介護者たち』=深田耕一郎・著」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140126ddm015070041000c.html





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福祉と贈与―全身性障害者・新田勲と介護者たち
深田 耕一郎
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