覚え書:「今週の本棚・新刊:『独裁者に原爆を売る男たち 核の世界地図』=会川晴之・著」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『独裁者に原爆を売る男たち 核の世界地図』=会川晴之・著
毎日新聞 2014年01月26日 東京朝刊

 (文春新書・935円)

 日米両国がモンゴルで進めていた核廃棄物処分場計画スクープなどでボーン・上田記念国際記者賞を受賞した毎日新聞記者が迫った「核の闇市場」のリアルな現場。パキスタンの「原爆の父」とも呼ばれるカーン博士の組織は、少なくとも3カ国に核兵器製造機器を売り込んでいた。カーン・ネットワークを追った海外ジャーナリストらの仕事はあるが、日本人が関係個所を訪ね歩いて真相に肉薄した例は珍しく、最新情報を伝える貴重な成果と言える。

 カーン博士は2004年にテレビでイラン、リビア北朝鮮の核開発に協力したことを認めたあと、パキスタン当局によって自宅軟禁状態に置かれ「闇市場」は崩壊した。だが逮捕された関係者は一部にすぎず、多くは今や自由の身になっている。著者は「闇市場」を技術面で支えたスイス人親子の足跡を、裁判などを基に追う。内部情報を求めて親子と接触した米中央情報局(CIA)の動きは興味深い。本書の後半では、核拡散防止条約(NPT)への加盟を見送った国々の歴史にふれ、核の未来を展望する。東京電力福島第1原発事故後の日本の核燃料サイクル計画を考える一助にもなる。(俊)
    −−「今週の本棚・新刊:『独裁者に原爆を売る男たち 核の世界地図』=会川晴之・著」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140126ddm015070035000c.html





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