覚え書:「今週の本棚・新刊:『西行全歌集』=久保田淳・吉野朋美校注」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『西行全歌集』=久保田淳・吉野朋美校注
毎日新聞 2014年01月26日 東京朝刊
(岩波文庫・1323円)
西行(佐藤義清(のりきよ))は、平清盛と同じ一一一八年に生まれ、鳥羽上皇に仕えた北面の武士であったが、二十三歳で出家した。その出家の謎や、待賢門院への恋の真偽の謎に加え、「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃」という歌どおりに亡くなったドラマティックな最期ゆえに、人気の高い歌人である。「享受者それぞれの思い描く西行像が先入主として存在するために、その和歌表現の多様性や伝統性、同時代歌人との共通性などには余り注意が払われてこなかったのではないかという気もする」(「解説」久保田淳)
この指摘は、研究者や歌人のみならず、古典和歌を愛する多くの読者の思いであろう。
本書は、『山家集(さんかしゅう)』『聞書集(ききがきしゅう)』『残集(ざんしゅう)』、また自歌合(じかあわせ)である『御裳濯河歌合(みもすそがわうたあわせ)』『宮河(みやがわ)歌合』ほか、現在知られる西行の歌約二三〇〇首すべてを集成、かつ脚注・補注などにより読みやすく工夫されている。
格調高い名歌の数々に出会う一方で、素朴ななつかしい歌に出会うのもうれしい。
竹馬(たけむま)を杖(つゑ)にもけふは頼(たの)むかな童遊(わらはあそ)びを思(おも)ひ出(い)でつゝ『聞書集』(ゆ)
−−「今週の本棚・新刊:『西行全歌集』=久保田淳・吉野朋美校注」、『毎日新聞』2014年01月26日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140126ddm015070038000c.html