覚え書:「声:度重なる発言撤回、不誠実だ」『朝日新聞』2014年02月23日(日)付。


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(声)度重なる発言撤回、不誠実だ
会社員(東京都 33)

 彼らはその言葉で時を巻き戻せると思っているのだろうか。NHK会長、首相補佐官といった要人らが自らの意思で発した言葉を即座に無きものにしている。撤回の効力を本当に信じているのだとすれば、政治の世界で公約の多くが反故(ほご)にされるのもうなずける。都合が悪くなったら撤回すればよい、という軽率な人たちが中枢にいる公共放送や政権では、国民との対話など望むべくもない。

 かつて安倍晋三首相は「全身全霊をかけて内閣総理大臣の職責を果たす」と所信表明した翌々日に辞意を示した。この撤回の6年後、五輪招致のスピーチでは福島第一原発から漏れた汚染水を「アンダーコントロール(制御されている)」と世界に発信したが、これも撤回される日が来るのだろうか。

 今後も撤回が乱れ飛べば、もはや言葉自体から意味が剥がれ落ちていくことになりかねない。彼らに限らず、要職にある人たちには事実の吟味も含めて発言に慎重かつ誠実であることを望みたい。
    −−「声:度重なる発言撤回、不誠実だ」『朝日新聞』2014年02月23日(日)付。

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