覚え書:「法王、命がけの財務改革 マフィア反発、報復の恐れも ローマ=石田博士」、『朝日新聞』2014年03月23日(日)付。

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法王、命がけの財務改革 マフィア反発、報復の恐れも
ローマ=石田博士2014年3月23日11時38分

(写真・図版)ローマの教会で21日、マフィア犯罪の被害者遺族らと面会したフランシスコ法王(右端)=AP


 ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は21日、マフィア犯罪の犠牲者遺族ら約700人と面会した。今月13日に就任1年を迎えた法王は、マネーロンダリング資金洗浄)への関与も取り沙汰されてきた教会の財務改革を本格化。ただ、改革を阻もうとするマフィアに逆に命を狙われる恐れも指摘されている。

 集いでは、マフィアに殺害された842人の名が読み上げられた。法王は遺族に「私はあなた方と共にいます。つらい話を聞かせてくださって、ありがとう」と語りかけた。マフィアには「あなた方の金や力は血塗られている。地獄に落ちぬよう悔い改め、悪行をやめなさい」と非難した。

 昨年3月に就任したフランシスコ法王は前例にとらわれない姿勢で改革に臨んでいる。バチカンの官僚組織に属してこなかった世界各地の「現場派」の枢機卿ら8人を諮問委員に任命し、改革案を作成中。最大の焦点がバチカンの財務部門の改革だ。

 法王は今年2月、これまでの財産管理局に代えて、「財務省」を新設する教令を出した。長官には、官僚組織改革の急先鋒(きゅうせんぽう)であり、8人の諮問委員の一人であるシドニーのペル枢機卿を据えた。3月8日には、財務省を監督する15人の評議会も設立。うち7人を教会外部の金融界から招いた。先々代のヨハネ・パウロ2世によって固められた教会組織を、四半世紀ぶりに大きく再編する動きだ。

 今後の焦点は、教会の資産を管理・運営してきた宗教事業協会(通称バチカン銀行)だ。資産は約60億ユーロ(約8400億円)とされる。教会の力の源泉とみられてきたが、一方でこの協会に設けられた聖職者の口座がイタリアの保守政治家やマフィアの借名口座として使われ、マネーロンダリングの温床だったとも指摘されてきた。

 フランシスコ法王は、協会事務局長ら教会の財務を長年担ってきた古参幹部の多くを退任させた。上級会計士だった司祭は資金洗浄の疑いでイタリアの捜査当局に逮捕された。1月には協会の監督役だった枢機卿5人のうち4人を代えた。

 一方、法王の急進的な改革に対して、マフィアの報復を懸念する声もある。イタリア南部カラブリア州でマフィア対策に当たっているグラテッリ検事は昨年11月、カトリック教会の金融事業の抜け穴を悪用してきたマフィアが法王の改革に対して神経をとがらせている、と地元紙に語った。

 ただ、フランシスコ法王側はひるんでいない。マフィアの反発について、バチカンの広報官は「教会は極めて平静だ」と述べ、財務改革を続ける方針を示している。(ローマ=石田博士)
    −−「法王、命がけの財務改革 マフィア反発、報復の恐れも ローマ=石田博士」、『朝日新聞』2014年03月23日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/ASG3Q43V3G3QUHBI00B.html





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