覚え書:「おんなのしんぶん:Tokiko’s Kiss 対談 加藤登紀子×細川護熙 『これは、いかん!』 危機感じ『脱原発』」、『毎日新聞』2014年04月07日(月)付。

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おんなのしんぶん:Tokiko’s Kiss 対談 加藤登紀子×細川護熙 「これは、いかん!」 危機感じ「脱原発
毎日新聞 2014年04月07日 東京朝刊

 今回の「Tokiko’s Kiss」のゲストは、今年2月に行われた東京都知事選に「脱原発」を掲げて立候補した細川護熙元首相です。対談は、京都の寺院に奉納するため、細川元首相が制作中のふすま絵が並ぶ東京都内のアトリエで行われました。最近の細川元首相を取り巻くテーマに沿って、今の気持ちをお聞きしました。【構成・吉永磨美、写真・矢頭智剛】

加藤 国会議員を辞められてから16年、陶芸からふすま絵の道にまい進されて、政治と関わることは、お考えにならなかったんですか。

細川 考えませんでしたね。陶芸のほか、数年前から絵を描くようになり、今、薬師寺に奉納する約60面のふすま絵を手がけています。京都の春夏秋冬を描いたふすま絵は、この4月22日から建仁寺で展示されます。

加藤 その生活から一転、今年2月、小泉純一郎元首相とともに「脱原発」の政策を掲げ、都知事選に出馬されましたね。

細川 きっかけは、東京電力福島第1原発であれだけの事故があったにもかかわらず、原発の再稼働と基幹エネルギー化が政府の方針になるというので、「これは、もういかん!」と思ったからです。

 実は、その数年前から、英国北西部のセラフィールドで起きた核燃料再処理工場の大量漏えい事故を扱ったテレビのドキュメンタリーを見て危機意識を持っていました。青森県の六ケ所村の再処理工場から送られた核のゴミも処理されていたと知り、六ケ所の工場について調べてみました。

 そうすると、放射性物質の含まれる廃液などを流す工場内の配管が60キロメートルもあり、そこには多くの継ぎ目がある。「大きな地震が来たら大変なことになるのではないか」と危機感が強まりました。

 ◇地元では「再稼働」

加藤 原発がある自治体では、稼働していないと地元経済に影響があるという声があるようです。「脱原発」「廃炉」へかじを早く切った方が、建設的な未来が開けるように思うんですが、いかがですか。

細川 そうですね。今は太陽光、風力など自然を生かした再生可能エネルギーで、小規模でも頑張っている方たちがおられます。原発に頼らなくてもすむように、そうした方たちと、それに関心のある企業を結びつけるなど、再生可能エネルギーの普及をサポートする仕組みなどもできるといいですね。来月にはそんな活動を始めたいと考えています。

加藤 小泉さんも講演で取り上げていた「新しい火の創造」(ダイヤモンド社)の著者、エイモリー・B・ロビンス氏は、1970年代から「再生可能エネルギーを使うほうが経済的である」と提唱していますしね。

細川 オーストリアなどはバイオマスを利用した発電が盛んだし、デンマークは風力が発電量の30%程度で、バイオマスを加えると40%を超えるというんだから、すごいですね。

加藤 オーストリアもエネルギー政策を転換して経済が活性化し、脱原発路線のドイツの経済もうまくいっている。東電福島原発事故以降、エネルギーに対する考え方に「革命」とも言える変化が起きたと思いますね。でも、国は、その変化に対して逆行しているように見えます。

細川 原発推進を止めるには、国のトップが、その気になることがまず第一ですね。立地自治体の首長が代わるだけでも、再稼働にブレーキをかけられるかもしれない。

 ◇復興、現実的に

加藤 細川さんは被災地での「森の長城プロジェクト」(注)で、津波の減災にも生かせる森作りを進めていますね。

細川 未利用の土地でバイオ燃料の作物を作ったり、太陽光パネルを設置したりすれば、被災地が再生可能エネルギーの基地にもなり、雇用も生まれます。

加藤 森や山に若者が関わることで、地域が活性化するというプランですね。復興は複合的、現実的に考えていかないと。

細川 被災地はもともと過疎が進んでいる地域。生活もまた地域の活性化も大変難しいテーマですが、モデルとなる地域をまずつくることが早道かもしれませんね。

加藤 小さいプロジェクトでもいいから、一つ一つをみんなで応援する形を作りたいですね。細川さんが描いているふすま絵のように、「復興の光」があちこちにともっていくようになったらいいなと思います。

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 ◇森の長城プロジェクト

 東日本大震災で被災した太平洋岸に、残土とがれきなどを盛って、シイ・タブなどを植樹し、森を育んで津波を防ぐ「森の防潮堤」を作る計画。

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 ■人物略歴

 ◇ほそかわ・もりひろ

 第79代首相。旧熊本藩主細川家の第18代当主。元熊本県知事。陶芸のほか、墨書などを手がける。現在はふすま絵の制作を中心に活動。76歳。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140407ddm014070053000c.html





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