覚え書:「師父の遺言 [著]松井今朝子」、『朝日新聞』2014年04月06日(日)付。

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師父の遺言 [著]松井今朝子
[掲載]2014年04月06日   [ジャンル]人文 ノンフィクション・評伝 


 著者は、歌舞伎と縁の深い京都の料亭の家に育った直木賞作家。自身の起伏に富んだ来し方を振り返りつつ、波乱の振り幅がさらに大きかった師、武智鉄二の晩年を「最後の弟子」の立場からつづっている。古典芸能の神髄に通じた文化人として近年再評価が進む武智だが、「武智歌舞伎」などで評判をとった前半生と比べ、後年は、金銭も称賛も離れていった。「本人も多少不満に思うところがあったのではないか」と漏らした著者に、兄弟子格の中村扇雀(現坂田藤十郎)が、そんな「(器の)小さい人じゃなかった」と即座に否定する場面は感動的だ。演出指導のセリフが「扇雀より上手に感じられた」という著者の感想にも驚かされる。
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 (NHK出版・1728円) 
    −−「師父の遺言 [著]松井今朝子」、『朝日新聞』2014年04月06日(日)付。

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武智鉄二の晩年 「最後の弟子」の立場から|好書好日





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師父の遺言
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