覚え書:「今週の本棚・新刊:『謝るなら、いつでもおいで』=川名壮志・著」、『毎日新聞』2014年04月20日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『謝るなら、いつでもおいで』=川名壮志・著
毎日新聞 2014年04月20日 東京朝刊

 (集英社・1620円)

 親しい人を不条理に奪われたとき、人は「なぜ」の思いに駆られる。だが、答えは容易に出ない。

 10年前に長崎県佐世保市の小学校で6年生の少女が同級生を殺害した。亡くなったのは12歳の女の子で、父は毎日新聞佐世保支局長だった。当時支局員だった著者は、事件が関係する人たちに何をもたらしたのか描き出そうとする。

 本書は、著者である「僕」の視点で書いた当時のルポと、女の子の次兄と父、それに加害少女の父親のインタビューの2部構成となっている。次兄の立場で、父の立場で、そして取り返しのつかないことをしてしまった子供の父親の立場で、2人のことを考える。

 次兄は当時中学3年生で、妹とも、加害少女とも「話が合った」。だからか、加害少女に対する考察にははっとさせられる箇所があり、それは書名にもつながっていく。一方、父は行きつ戻りつ思索を重ね、「なぜ起きたか」ではなく、「なぜ防げなかったか」を、自分も含め周囲の大人に問いかける。少年事件を考えることは“子供”を考えることだと改めて思う。同時に、時間をかけて考え続けた人の言葉に驚く。(咲) 
    −−「今週の本棚・新刊:『謝るなら、いつでもおいで』=川名壮志・著」、『毎日新聞』2014年04月20日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140420ddm015070039000c.html





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謝るなら、いつでもおいで
川名 壮志
集英社
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