覚え書:「今週の本棚・本と人:『善き書店員』 著者・木村俊介さん」、『毎日新聞』2014年04月20日(日)付。

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今週の本棚・本と人:『善き書店員』 著者・木村俊介さん
毎日新聞 2014年04月20日 東京朝刊

 (ミシマ社・1944円)

 ◇インタビューの潜在的な可能性−−木村俊介(きむら・しゅんすけ)さん

 書店員6人へのインタビューから、「善く働く」とは何かを探った。

 ほぼ毎日、足を運ぶほどの書店好きだ。「長年見ていると、書店員の人たちがだんだん元気をなくしているようで」。出口が見えない出版不況。書店も書店員も苦しんでいる。6人のうちの1人は、10人ほどいた同期がみな辞めてしまった。「本当に好きじゃなければやめた方がいいよ、と年下の人間には言わざるをえない業界になっています」と語る大手書店の男性も。

 「労働時間に対して給料も安い。時給換算すれば、ファストフードのアルバイトより安いこともしばしばです。そんな苦しい中でも、仕事に面白さや美学を見いだしている人たちがいます。まさに『善い人』だと」

 どん底に近い経営状態を立て直し、「町の本屋の最高峰を目指す」という若き経営者。本を売るだけでなく、従業員を育てることに意欲を持つ店長。あるいは店づくり、棚づくりにそそぐ熱意から、出版文化を支える働きがいが伝わってくる。

 肩書は「インタビュアー」。東大1年生のとき、ノンフィクション作家・立花隆さんの「調べて書く」ゼミに参加した。「人に会って話を聞くのが、こんなに面白いのか」と感じた。以来、「働くこと」や「つくること」を主なテーマに、これまで約500人以上に取材し、著作として発表してきた。

 インタビューについて、「相手の内面世界を一緒に掘っていく感覚ですね」。6人の1人が「こういう切実な気持ちを人に話すのって、たぶん初めて」と話したように、聞き上手だ。相手が普段考えていないことを、潜在意識から引き上げ、言語化させる。著名人のインタビュー依頼が多いのも、うなずける。

 自分の言葉を差し挟まず、相手の話し言葉だけで作品を紡ぐことが多い。ともすると平板な内容になりそうだ。しかも今回の6人は著名人ではない。それでも、それぞれの成功や失敗談、あるいは思索の中に読者をいざない、飽きさせない。

 「インタビューの潜在的な可能性を切り開いていきたい」。37歳の若さにして、取材、執筆歴は20年近い。この先、どんなインタビューをして、どれだけ豊かな世界を見せてくれるのか、楽しみだ。<文と写真・栗原俊雄>
    −−「今週の本棚・本と人:『善き書店員』 著者・木村俊介さん」、『毎日新聞』2014年04月20日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140420ddm015070044000c.html





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