覚え書:「どう動く:集団的自衛権・識者に聞く シーラ・スミス、米外交問題評議会上級研究員」、『毎日新聞』2014年04月22日(火)付。

5_2

        • -

どう動く:集団的自衛権・識者に聞く シーラ・スミス、米外交問題評議会上級研究員
毎日新聞 2014年04月22日 東京朝刊

(写真キャプション)インタビューに答える有「外交問題評議会」のシーラ・スミス上級研究員=ワシントンで、西田進一郎撮影

 ◇国内外へ説明重要

 「米政府は、米軍と自衛隊がどうすればより効果的に作戦行動できるかの議論に関心がある。双方に優先順位が高い弾道ミサイル防衛や海洋安全保障などだ。真剣で明確な対話が非常に重要だ。

 日本には憲法自衛隊について議論してきたこれまでの経緯があり、継続性は重要だ。憲法の解釈を見直すか、憲法を改正するのかはまさに日本人の問題だ。しかし、日本は危機管理についても考えなければならない。ここ10年あまりで周辺国はかなりの種類の武器を入手し、日本の領域の極めて近くで作戦行動をとってきた。事故や誤算があるかもしれず、不測の事態に備えて準備すべきだ」

 中国の国防予算は公表されているものだけでも1989年以降、2010年を除いて毎年2ケタの高い伸びを示し、10年で約4倍に増えた。レーダーでとらえにくいステルス無人攻撃機や、ミサイル防衛システムを突破する極超音速ミサイルなどの開発を進めている。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使が必要な理由として、東アジアの安全保障環境の悪化を繰り返し強調する。

 「日本が追求する弾道ミサイル防衛や島しょ防衛、海洋安全保障などの戦略的な必要性は完全に理解できる。韓国を含む近隣諸国が国防費を相当に増やす中、日本は防衛費を減らし続けた。ここ数年増やしたといってもわずかであり、理性的な尺度でみれば、日本に『軍国主義』の心配はないだろう。防衛の必要性に非常にかなったものだ。

 ただ、首相は、歴史に関わるさまざまな見解が国外の懸念を不必要に高めていることを理解する必要がある」

 昨年12月26日の首相の靖国神社参拝に対し、米政府は「失望している」との声明を発表。マイケル・グリーン国家安全保障会議アジア上級部長やスミス氏ら知日派の多くは声明を支持した。これに対し、安倍政権では衛藤晟一首相補佐官が2月に動画サイトで「(声明は)中国への言い訳だ」と反論するなど、日米関係は一時ぎくしゃくした。

 「前回、ガイドライン(日米防衛協力の指針)を見直した90年代、日本政府はソウルや北京に出向いて政策の意図を積極的に説明した。しかし今日、韓国、中国はともに日本と政治的対話を望んでおらず、音信不通だ。(集団的自衛権に関する)国内外への明快な説明と透明性は、かつてと同様、今も日本にとって重要なポイントだ。

 防衛政策の必要性を率直に話す義務は、日本だけでなくアジア地域の軍事的な大国すべてが負っている。中国がテーブルに着き、軍備拡張で日本やフィリピン、マレーシアの安全を損なう意図がないことを説明すれば、各国は安心できる。韓国もより正直に日本と対話すべきだ」

 日米両政府は年末までにガイドラインを再改定する方針。米国防総省高官は、日本の集団的自衛権の行使容認を反映させることに期待感を示している。首相は就任後、東南アジア諸国連合ASEAN)加盟10カ国をすべて訪問し、集団的自衛権の行使を含む「積極的平和主義」の外交方針に理解を求めてきたが、肝心の中国とは首脳会談開催の見通しが立っていない。一方、韓国とは先月ようやく、米国を交えた3カ国首脳会談がオランダで開かれた。【構成・西田進一郎】=随時掲載

==============

 ■人物略歴

 ◇Sheila Smith

 米外交問題評議会上級研究員。コロンビア大で博士号(政治学)を取得し、東西センターなどを経て現職。専門は日本の政治、外交政策。国際問題研究所や東京大などで客員研究員も経験。民主党オバマ政権に近い。 
    −−「どう動く:集団的自衛権・識者に聞く シーラ・スミス、米外交問題評議会上級研究員」、『毎日新聞』2014年04月22日(火)付。

        • -


http://mainichi.jp/shimen/news/20140422ddm002010042000c.html





52_2

Resize0884