覚え書:「今週の本棚・新刊:『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』=寺尾隆吉・訳」、『毎日新聞』2014年05月18日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』=寺尾隆吉・訳
毎日新聞 2014年05月18日 東京朝刊

 (水声社・1944円)

 先月死去したラテンアメリカ文学の巨星、ガルシア・マルケスが、代表作『百年の孤独』の成功直後に行った公開対談である。相手は当時すでにスター作家だったバルガス・リョサ(ジョサ)。ラテンアメリカ文学ブームを牽引(けんいん)し、のちにノーベル文学賞を受賞した二人の対話は、互いの文学観や個性のちがいが際立ち、実にスリリングだ。時は1967年9月、場所はペルー・リマ。

 <『百年の孤独』は幻想的作品と呼んでいいか。あなたは自分をリアリズム作家だと思っていますか>とストレートに尋ねるリョサに、<ラテンアメリカではすべてが起こりうるし、あらゆることがリアルだ>と答えるマルケス。論理と真面目さで迫るリョサを、マルケスは老獪(ろうかい)にかわして煙に巻く。そのやり取りに、双方の創作の秘密が見え隠れする。

 政治的スタンスだけでなく、人間的にも対照をなす二人は、その後決裂する。尊敬と友情に支えられた若き日の応酬には、世界文学の先端を走る気概と自信を感じる。他にリョサによるマルケス論、メキシコの作家、エレナ・ポニアトウスカに答えたリョサのインタビューを収録。60年代の熱を知る貴重な記録だ。(部)
    −−「今週の本棚・新刊:『疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話』=寺尾隆吉・訳」、『毎日新聞』2014年05月18日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140518ddm015070041000c.html





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