書評:田辺元(藤田正勝編)『田辺元哲学選I 種の論理』岩波文庫、2014年。

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田辺元(藤田正勝編)『田辺元哲学選I 種の論理』岩波文庫、読了。本選集は社会的実存の論理を提示する田辺の「社会存在の論理 哲学的社会学試論」、「種の論理と世界図式 絶対媒介の哲学への途」、「種の論理の意味を明にす」の三論文を収録。

絶対的なものを無媒介に立てる西田的立場を批判し、類、種、個の「媒介」の論理を提案するのが「種の論理」だが、日本人は、どこまで国家に隷属していることに無自覚なのかと暗澹たる気持ちになってしまう。

種の論理が現実国家の「神性」を根拠づける可能性をはらむと批判したのは南原繁(『国家と宗教』岩波書店、1942年)だが、哲学者こそ、現実には「仮象」に過ぎぬ「国家」や「民族」を絶えず相対化すべきはずなのに、籠絡されていく現実は、決して過去のものではない。

「応現」の当体としての国家が想定されるが(「絶対の応現的現成」)、これは日本思想史における日本仏教の権力への馴化の問題と連動する。

福沢諭吉が批判し、その精神を継承した丸山眞男の批判は今いずこ。フーコー以前の世界がそのままつづく現代日本なのか。

ぐったり。





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