覚え書:「どう動く:集団的自衛権 私の意見/3 「限定的」ありえない 神戸女学院大名誉教授・内田樹さん(63)」、『毎日新聞』2014年06月16日(月)付。

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どう動く:集団的自衛権 私の意見/3 「限定的」ありえない 神戸女学院大名誉教授・内田樹さん(63)
毎日新聞 2014年06月16日 東京朝刊

 集団的自衛権の行使の容認に、外交的なメリットは何もない。海外での戦争に巻き込まれれば、自衛隊員の死傷者が出るし、日本も敵国によるテロの対象となるだろう。そのようなリスクが伴うにもかかわらず、海外での軍事行動が米軍の作戦統制下でなされる以上、戦術について日本政府には決定権がない。

 70年間戦争をしなかった国がいきなり自国を攻撃してもいない国との戦闘行動に入るわけだから、日本を敵視する国を新たに作り出すだけでなく、第三国からの信頼を著しく損ない、米国以外に友邦を持たない孤立国家になるだろう。

 「限定容認論」も特定秘密保護法がある以上、何の意味ももたない。軍事衝突が起こればそれに関する情報はただちに特定秘密に指定され、国会もメディアもそこで何が起きているかについて知る権利を失う。軍事行動が「限定的」かどうかを行政府ひとりで判断する以上、歯止めになることは論理的にありえない。

 解釈改憲は、憲法本文には手をつけないで、9条空洞化の「実だけを取る」ために思いついた米国向けの苦し紛れの政治的曲芸以外の何ものでもない。国会答弁を見ても分かる通り、安倍晋三首相は国民には説明責任を果たす気がない。不誠実というより、説明できないのだ。条理の通った説明をしようとしたら、「国防政策について日本は米国の許諾を得ないと何も決定できない」という従属国の現実から語るしかないからである。【聞き手・一條優太】=随時掲載

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 ■人物略歴

 ◇うちだ・たつる

 東京都立大大学院博士課程中退。多田塾甲南合気会師範。専門はフランス現代思想。著書に「街場の憂国論」など。
    −−「どう動く:集団的自衛権 私の意見/3 「限定的」ありえない 神戸女学院大名誉教授・内田樹さん(63)」、『毎日新聞』2014年06月16日(月)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140616ddm041010158000c.html


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