覚え書:「書評:金持ちは税率70%でもいい VSみんな10%課税がいい ポール・クルーグマン ほか著」、『東京新聞』2014年07月13日(日)付。

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金持ちは税率70%でもいい VSみんな10%課税がいい ポール・クルーグマン ほか著

2014年7月13日

◆格差と税めぐる論戦
[評者]根井雅弘=京都大教授
 格差社会増税論をめぐるディベートの記録。論者四人のうちポール・クルーグマンら二人が金持ち増税に賛成、ニュート・ギングリッチ(元米国下院議長)ら二人が反対という図式だ。
 クルーグマンは、上位1%の富裕層に対する実効税率が現在よりも高かったクリントン政権時に米国経済は急成長を遂げた例を挙げ、富裕層への増税が経済に悪影響を及ぼすという主張を否定する。ジョージ・パパンドレウ(元ギリシャ首相)も、格差拡大が「公正」「正義」「信頼」という社会の基本原理を蝕(むしば)んでいるとして、金持ち増税に賛成している。
 これに対してギングリッチは、金持ちは有能な会計士や弁護士を雇って税金逃れをするし、課税する力とは破壊する力なのだとの理由で、成功した者を罰するような金持ち増税に反対している。アーサー・ラッファー(レーガン元大統領の経済顧問)も、ラッファー曲線に基づいて金持ちに増税しても期待するほど税収は増えないと反論する。三十年前に流行した曲線が再び出てきたのは驚きだが、税率の高低ばかりでなく課税ベースを広げる税制改革についてもっと議論すべきだという建設的な意見も述べている。
 ハイエクなら支持した一律10%の課税案について、「租税は文明社会の対価」と考えるクルーグマンは反対している。増税問題の論点整理に役立つ読み物だ。
 (町田敦夫訳、東洋経済新報社・1296円)
 Paul Krugman 米国の経済学者。2008年にノーベル経済学賞受賞。著者は他に3人。
◆もう1冊 
 三木義一著『日本の税金 新版』(岩波新書)。十一刷を数えた旧版を全面的に見直し、国際課税の章を新設。
    −−「書評:金持ちは税率70%でもいい VSみんな10%課税がいい ポール・クルーグマン ほか著」、『東京新聞』2014年07月13日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014071302000176.html





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