覚え書:「安倍政治どうですか:/1 平和主義を破った=藤井裕久・元財務相」、『毎日新聞』2014年08月14日(木)付。

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安倍政治どうですか:/1 平和主義を破った=藤井裕久・元財務相
毎日新聞 2014年08月14日 東京朝刊

=藤井達也撮影

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 ◇藤井裕久・元財務相(82)

 −−安倍晋三首相の政権運営をどう評価しますか。

 ◆歴史観が偏り過ぎていることと、金をばらまけば経済が良くなるという手法の限界を認識していないことの2点に尽きる。

 −−偏った歴史観とは。

 ◆安倍さんは、日本が中国を侵略したかどうかは「定義が定まっていない」と(答弁した)。しかし盧溝橋事件後、南京、武漢三鎮、広東までとったのは、明らかに侵略だ。もう一つの問題は、持論である「戦後レジーム(体制)からの脱却」。戦後体制を中心になって作ったのは自由民主党だ。安倍さんは集団的自衛権を言うことで、先輩たちが守ってきた平和主義を破っている。さらに米国とバイラテラル(2国間)でやろうとしているが、そうすると必ず仮想敵国を作り、それが本当の敵になる。

 −−首相は「海外派兵は許されないという原則は変わらない」と言っています。

 ◆ならばなぜ集団的自衛権を言うのか。政府が与党協議で挙げた15事例は、全て個別的自衛権の問題だ。また安倍さんは、憲法解釈変更でやった。徴兵制も、違憲の根拠とされる憲法18条は「意に反する苦役(に服させられない)」と書いてあるだけで、解釈で禁じている。解釈を変えればいつでもできることになる。今の自衛隊は、海外に派遣されるとは考えずに入った人がほとんどだ。海外に派遣されるとなったら辞める人が出るかもしれない。そうなると、徴兵制にしなければ成り立たない。

 −−経済政策はどう評価していますか。

 ◆法人税減税とその代替財源として外形標準課税の拡大を検討するなど、恵まれた人をより恵まれるようにすることが経済を良くするという発想が根底にある。実体経済を良くしていないばかりか、結果として円安になり、輸出は伸び悩む一方で、国民生活に直結する物価が上がっている。このままだと昭和初期の格差社会と同じ状況に行き着く可能性がある。

 −−しかし、安倍政権の支持率を支えているのは経済政策への支持です。

 ◆株価が上がっているからだ。安倍さんほど株価にご執心の首相は珍しい。6月に閣議決定した成長戦略に盛り込んだ年金積立金の運用見直しも株価対策だ。しかし、株価が上がれば世の中が良くなるという発想はおかしい。池田勇人元首相は経済を良くすることが「目的」だったが、安倍さんにとって経済は、真の目的である集団的自衛権などの安全保障政策にのってもらいやすくするための「手段」に過ぎない。

 −−首相は新たに「地方創生」を掲げています。

 ◆考え方は正しいが、実現できるかどうか。田中角栄元首相は「過疎と過密の同時解消」を掲げたが、結局失敗した。東京五輪は東京一極集中を加速する懸念がある。東日本大震災からの復興もある。一過性の金ばらまきはやめて、非正規社員の正社員化など雇用の安定や社会保障の安定により消費を増やし、経済を安定させる政策に転換すべきだ。【聞き手・上野央絵】=つづく

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 「政高党低」といわれる中、独自色の強い政策を次々と進めている安倍政権をどう見るか。与野党の要職を務めた国会議員経験者に、政治部デスクが聞いた。

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 ■人物略歴

 ◇ふじい・ひろひさ

 旧大蔵省出身。参院議員2期、衆院議員7期。財務相など歴任、現在民主党近現代史研究会座長。
    −−「安倍政治どうですか:/1 平和主義を破った=藤井裕久・元財務相」、『毎日新聞』2014年08月14日(木)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140814ddm005010149000c.html


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