覚え書:「今週の本棚・新刊:『軍港都市史研究3 呉編』=河西英通・編」、『毎日新聞』2014年08月17日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『軍港都市史研究3 呉編』=河西英通・編
毎日新聞 2014年08月17日 東京朝刊
(清文堂・8424円)
「大和ミュージアム」や海上自衛隊の存在で、今も軍事都市イメージの強い広島県呉市。その戦前史を直接的な軍事以外の側面にも注目して描いた論集である。戦前日本の近代化の、ある側面での突端を走った都市の話だけに、単なる地域史を超え、興味をそそられる。
海軍が来るまで小漁村に過ぎなかった呉市は、戦前人口が35万人を突破した。たとえば、今や100万都市の仙台が、せいぜい20万人台の時代にだ。寒村が大軍事都市へと発展する過程で、従来のたたら製鉄が海軍に納品されたり、缶詰産業が盛んになったり、米騒動で海軍が銃剣を市民に向けたり。海水浴場など戦前の市民の娯楽も論じた。
特筆すべきは、1935年の「国防と産業大博覧会」で、生身のアイヌを「展示」した「アイヌ人風俗館」なる興行があったとの指摘だろう。似た例は、03年に大阪で開かれた第5回内国勧業博覧会で、アイヌ以外に「沖縄人」や台湾の「高砂族」を並べた「人類館」が有名。昭和初期にもまだ、同様の展示があったとは。さらなる研究が求められる。
同じシリーズで、今後、横須賀編や佐世保編も刊行予定だ。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『軍港都市史研究3 呉編』=河西英通・編」、『毎日新聞』2014年08月17日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140817ddm015070039000c.html