覚え書:「今週の本棚・新刊:『ブラボー 隠されたビキニ水爆実験の真実』=高瀬毅・著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『ブラボー 隠されたビキニ水爆実験の真実』=高瀬毅・著
毎日新聞 2014年08月24日 東京朝刊

 (平凡社・1944円)

 1954年、米国の水爆実験で第五福竜丸が被ばくした「ビキニ事件」とはいったい何だったのか。これまで語られてきた、日本にとっての「ビキニ事件」だけでなく、乗組員にとっての「ビキニ事件」を漁労長・見崎吉男の生涯を軸に問うた。

 静岡・焼津では漁師を「漁士」と呼ぶという。見崎は船のすべてを差配する漁労長として技術を磨き、その後も被ばくした乗組員の生活に心を砕く。その誇り高い姿とは対照的に、事件を矮小(わいしょう)化しようとする日米両政府や、漁船側に不注意があったとするマスコミの報道が描かれる。

 また、見崎の生涯を通して振り返るからこそ、別の側面も見えてくる。事件は原水爆禁止運動の原点としても知られるが、その原動力となったのは、被ばくした乗組員への同情というよりは、「食の安全」への不安だったことに今さらながら胸をつかれる思いがする。だから、ほぼ同時期に「核の平和利用」ブームが起こり、原水禁運動も国民的運動として長続きしなかった。その一因がここにあるような気がしてならない。いずれにしても、福島を巡る状況や今に至る日本の反核運動と重ねて考えずにはおれない。(咲) 
    −−「今週の本棚・新刊:『ブラボー 隠されたビキニ水爆実験の真実』=高瀬毅・著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140824ddm015070020000c.html





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ブラボー: 隠されたビキニ水爆実験の真実
高瀬 毅
平凡社
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