覚え書:「書評:北斎漫画 日本マンガの原点 清水 勲 著」、『東京新聞』2014年08月24日(日)付。
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北斎漫画 日本マンガの原点 清水 勲 著
2014年8月24日
◆ナンセンス 今に通じ
[評者]秋竜山=漫画家
北斎漫画研究の第一人者である清水さんが北斎漫画を解析する。北斎漫画というと、江戸時代の古くさい画風であり、現代漫画とかなりのズレがあるように思っていた人でも、本書によって北斎漫画をちがった目で見るようになるだろう。
例えば、「犬をヒモでつないで連れ歩く人」。現代では当たり前の情景だが、江戸の人のこうした姿は目新しい。本書が<北斎漫画の発見の楽しさはこうした絵にある>と言うのもうなずける。
ナンセンス漫画は<アメリカから入ってきた笑わせることを目的にした漫画が翻訳・紹介されて人気を博し、以来「ナンセンス漫画」と呼ばれるようになった>。ところが、北斎漫画にもナンセンス漫画がある。外国の洋服を着たナンセンス漫画ではなく、日本の着物姿のナンセンス漫画である。<「北斎漫画」の面白さの基盤は人間・人間性を風刺した絵「ナンセンス漫画」にあるといえる。人間の心をテーマにした普遍的な笑いだから古くならないのである>
吹き出しについても、北斎のものは風変わりだ。頭から発している。それを著者は、<人間の思考は胸ではなく頭で行なわれる>のだから、<きわめて合理的だ>と評価している。吹き出しを「あぶく」ともいう。あぶくのような形をしているからだ。あぶくのようにむなしく消えてしまうから、とは私の考え過ぎだ。
(平凡社新書・907円)
しみず・いさお 1939年生まれ。日本漫画資料館主宰。著書『漫画の歴史』など。
◆もう1冊
清水勲著『四コマ漫画』(岩波新書)。北斎漫画から今日の「萌え」まで、時代に寄り添ってきた四コマ漫画の歴史。
−−「書評:北斎漫画 日本マンガの原点 清水 勲 著」、『東京新聞』2014年08月24日(日)付。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014082402000174.html