覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』=辻田真佐憲・著」、『毎日新聞』2014年09月21日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』=辻田真佐憲・著
毎日新聞 2014年09月21日 東京朝刊
(幻冬舎新書・907円)
軍歌と聞けば、街宣車を連想する人も多いだろう。「右傾化」のせいか最近やや人気が出ているのは、気になる。おそらく初の、軍歌についての新書だ。著者は、大学生時代からウェブサイト「西洋軍歌蒐集(しゅうしゅう)館」で世界の軍歌を論じてきた。狂信的でも露悪的でもない解説で、評者は以前からファンである。
本書は、あくまで淡々と読みやすく、軍歌史を振り返る。徴兵制と共通語は、国民国家の基本アイテムである。その両方と絡む軍歌は、国民と国民の軍隊を創造する道具として生まれた。昭和戦前期にはメディアの力もあり、数々のヒットを生む「エンタメ」に。さらに、民衆と企業と当局の、軍歌を含むエンタメを軸にした「利益共同体」が、日本に破局をもたらしたとまで論じる。戦争末期、フィリピン山中の陣地で毎日新聞社員の作った新聞が軍歌を募集した話など、鬼気迫る。
今と関係のある話も。人気歌手がサッカー場で「君が代」を歌うなど、国民国家の統治・政治の表現として歌は生きている。日本が次に戦争をするならアイドルが軍歌を歌うだろう、と著者。軍歌の世界は、今も別の形で継続しているのだ。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『日本の軍歌 国民的音楽の歴史』=辻田真佐憲・著」、『毎日新聞』2014年09月21日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140921ddm015070016000c.html