覚え書:「書評:弱いつながり 東 浩紀 著」、『東京新聞』2014年09月21日(日)付。

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弱いつながり 東 浩紀 著

2014年9月21日
 
◆旅で発見 検索ワード
[評者]土佐有明=ライター
 情報のデジタル化が劇的に進む現在、万能のツールだと思われがちなグーグル検索について、著者はその限界を指摘する。ネットの使用がルーティーンになると検索ワードは固定化され、結果、手に入る情報も代わり映えしないのだ、と。
 この沈滞を脱するために、本書では旅に出ることが提案される。それも自分探しの旅ではなく、検索ワードを探すための旅である。著者は自身の旅行体験を踏まえながら、身体の移動によって、普段検索しない言葉が脳内に生じる、と説く。例えば、転職や転居にも似たような効用があるだろう。環境の変化は新たな情報への欲望を芽生えさせる。
 重要なのはこの<欲望>という部分だ。ネット通販を利用すると、過去の購入履歴を参考にしたお薦め商品を通知される。一見便利だが、個々人の欲望を先回りして局所に狭める機能ともいえる。それは他者が規定した世界を受動的に生きることに繋(つな)がりかねない。そうした生き方への疑義が本書の主張の基底をなす。
 また著者は、旅行中は積極的に検索をしながらも、ネット上の人間関係は切断しておくことを薦める。元々強い絆をより強くするSNSなどは一旦(いったん)離れ、リアルでの偶発的な出会いから<弱い絆>を手に入れろ、という。それは検索への欲望を更新し、検索ワードの持ち札を予期せぬ形で増やしてくれるはずだ。
 (幻冬舎・1404円)
 あずま・ひろき 1971年生まれ。作家・思想家。著書『存在論的、郵便的』など。
◆もう1冊 
 S・ヴァイディアナサン著『グーグル化の見えざる代償』(久保儀明訳・インプレスジャパン)。ネットの社会化を考察。
    −−「書評:弱いつながり 東 浩紀 著」、『東京新聞』2014年09月21日(日)付。

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弱いつながり 検索ワードを探す旅
東 浩紀
幻冬舎
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