覚え書:「声:『死ね』という言葉は使わない」、『朝日新聞』2014年09月28日(日)付。

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「死ね」という言葉は使わない
高校生(神奈川県 16)

 小学校低学年のとき、いじめられた。「変わっている」「死ね」などと、ひどい言葉を浴びせられた。木の枝を無理に食べさせられたこともあった。
 誰にも言えなかった。筆箱に「助けて」と書いた。気づいたのは母だ。隠したかったいじめだけど、気づいてもらえて、救われた。
 8歳のとき、米国の学校に転校した。そこで大切な友人を失った。がんだった彼女は、つらい治療中も私にはいつも笑顔だった。彼女の死は、お菓子を分け合ったり一緒にマニキュアを塗ったりする当たり前の日常が、かけがえのないものだと教えてくれた。
 日本では、テレビでも学校でも「死んじゃう」「死ね」の言葉が軽々しく使われる。しかし、私も経験したいじめの世界では、最初は冗談だった言葉が、本当の「死」へとエスカレートする。「死」という言葉を軽んじる風潮を、私は断固として食い止めたい。
 命を大切にする世界が容易に実現するとは思わない。でも、難しくても私が決意すればいい。私はいじめない。私は「死ね」という言葉を使わない。亡くなった友人も喜ぶはずだ。
    −−「声:『死ね』という言葉は使わない」、『朝日新聞』2014年09月28日(日)付。

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