覚え書:「『昭和天皇実録』を読み解く:戦後・人間宣言へ:4 聖書進講、たびたび同席」、『朝日新聞』2014年10月10日(金)付。

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(「昭和天皇実録」を読み解く)戦後・人間宣言へ:4 聖書進講、たびたび同席
2014年10月10日

(写真キャプション)来日したローマ法王ヨハネ・パウロ2世の訪問を受ける昭和天皇=1981年2月24日、皇居
 ■キリスト教への接近

 昭和天皇は太平洋戦争開戦直前の1941(昭和16)年11月2日、東条英機首相に「ローマ法王を通じた時局収拾の検討」を提案した。81(昭和56)年9月2日、宮内記者会の質問に「世界各国と深い関係を持った平和的な機関でもある法王庁との連絡が必要」と思った、と説明している。

 敗戦後の占領期はキリスト教関係者に頻繁に会った。46(昭和21)年4月27日、訪米する日本基督教女子青年会の植村環(たまき)会長に会い、トルーマン米大統領あての「平和希求についての御言葉」を託した。その後も天皇は、香淳皇后が植村会長から聖書について進講を受ける際、たびたび同席して話を聞いた。

 皇太子(いまの天皇陛下)の英語教師にクエーカー教徒のバイニング夫人を招くなど米国経由のキリスト教文化に接する一方、カトリック関係者へも近づいたことについて原武史明治学院大教授は「米国とは別のチャンネルも確保したいとの思惑があったのではないか」と推測する。

 48(昭和23)年8月24日にはオーストラリアの新聞主筆と会い、キリスト教帰依についての質問に「外来宗教については敬意を払っているが、自分は自分自身の宗教を体していったほうが良いと思う」と答え、改宗のうわさを打ち消した。

 皇太子結婚の際、皇太子妃(いまの皇后さま)がキリスト教系の聖心女子大出身であることが話題になった。「正仁親王常陸宮さま)がキリスト教に興味を持ったのは皇太子妃の影響であると聞かれた天皇が同妃に対し皇室においてキリスト教の話はしないようにと叱責(しっせき)された、という噂」が書かれた雑誌報道に対して天皇は、「事実がないばかりではなく、心に思ったことさえなかった」と伝えるよう側近に命じたことが、78(昭和53)年3月11日の実録に記されている。(編集委員・北野隆一) 
    −−「『昭和天皇実録』を読み解く:戦後・人間宣言へ:4 聖書進講、たびたび同席」、『朝日新聞』2014年10月10日(金)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11395049.html





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