覚え書：「書評：地球の細道 安西 水丸 著」、『東京新聞』2014年11月02日（日）付。
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地球の細道 安西 水丸 著
2014年11月2日
◆好きなもの育てる旅
［評者］荻原魚雷＝書評家
今年三月に七十一歳で急逝した安西水丸は、極上の旅人の目を持つ人だった。さらに歴史家の目もあった。過去と現在を自由気ままに行き来し、町に堆積した時間の断面図を見せてくれる。
この本は「ＧＡ ＪＡＰＡＮ」で十五年にわたって連載していた九十二篇の紀行文＋イラスト集である。国内各地と海外（北米・西洋・アジア）の町を訪ね歩き、その風土を描いた。没後、『ちいさな城下町』（文芸春秋）という紀行集も刊行されたが、とにかく城が大好き。専門家が唸（うな）るほどその知識は深く、底が知れない。雑談や余談といった感じで、自らの思い出と重ねながら、当たり前すぎて気づきにくい面白さを見つけ出し、その土地の歴史や名物について語る。
建築、料理、映画や本、ブルーウィロー（白地に青の柳模様の皿）やスノードーム（丸い透明な容器の中で雪が降っている風景を見せる置物）の蒐集（しゅうしゅう）…。あれこれと旅の話題は尽きない。
子供のころから金より銀が好き。一番より四番くらいがいい。「巨人大鵬卵焼き」を認めない。旅先でもその好みはゆるがない。人生を楽しんで生きるには「好きなもの」を大切に育てること。
その旅の足どりを追いかけていると、安西水丸の目に映った世界だけでなく、好きなものがたくさんあること、知らないことを知る喜びが伝わってくる。
（ＧＡ・２３７６円）
あんざい・みずまる １９４２〜２０１４年。イラストレーター。著書『４番目の美学』。
◆もう１冊
村上春樹・安西水丸著『村上朝日堂・改版』（新潮文庫）。村上春樹のエッセー、水丸のイラスト＆コラム集。
−−「書評：地球の細道 安西 水丸 著」、『東京新聞』2014年11月02日（日）付。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014110202000163.html
