覚え書:「TOPICS 徴兵拒否でフランスに亡命した若者が緊急来日! 韓国徴兵制を考えるトークイベント『徴兵なんてイヤだ』が開催」、『第三文明』第三文明社、2014年12月、14頁。

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徴兵拒否でフランスに亡命した若者が緊急来日!
韓国徴兵制を考えるトークイベント「徴兵なんてイヤだ」が開催
講師:イ・イェダ氏(フランス在住のベーグル職人)、雨宮処凛(作家)

 集団的自衛権公使の議論が進む中、一部で“徴兵制”の言葉がにわかに飛び交う状況になりつつある日本。隣国・韓国では、すでに長きにわたり徴兵制がしかれ、日本の若者に比べ戦争をリアルに感じる韓国の若者は多い。
 果たして韓国の若者は、この徴兵制度についてどのように感じているのだろうか。そんな問題意識から、憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン「マガジン9」が、トークイベント「徴兵なんてイヤだ!」を開催した。徴兵を拒否し、フランスに亡命した22歳のイ・イェダ氏が緊急来日したことを受け、作家の雨宮処凛氏とのトークセッションとなった。
 韓国の徴兵制は、1950年の韓国(朝鮮)戦争勃発後に実施され、当時、国の財政が不足する中で、ほぼ無償で徴集兵を服役させる制度であったが、経済力が上昇した現在もなお、わずかな低賃金のまま強制されている。
 韓国の男性は身体的な問題で兵役が免除されない限り、ほぼ100%ぼ確率で徴兵され、これを拒否すると、短くとも1年半の刑務所生活を強いられることになる。それだけではなく、徴兵拒否は“社会的な死”も伴い、徴兵経験がなければ公務員になることは難しく、就職の面接にも影響を与えるなど、韓国社会にあって“徴兵拒否”はタブー視されているのだ。
 こうした韓国社会で、日本文化が好きだったイェダ氏は手塚治虫の『ブッダ』を読み、命を殺めてはいけないことを心にとどめていた。その後、イラクやアフガンへの韓国軍派兵を見たことが徴兵を拒否するきっかけになったという。
 イェダ氏は徴兵拒否と亡命についてこう語る。「軍と政府の言いなりになりたくなかったから、徴兵を拒否して刑務所に行こうと思いました。でも私自身の幸せのために亡命することを選んだのです。正しいと思うことを行う権利が私にはあります。それはみんなにもある。亡命することで他の人への問題提起にもなると思いました」
 2012年、イェダ氏は入隊2カ月前の段階で、わずかな現金と片道チケットだけを手にフランスに亡命した。2013年に正式に亡命が認められ、現在はフランスの地でベーグル職人として働いている。
 じつは、韓国の若者が徴兵を忌避する別の理由として、先輩兵士から後輩兵士のいじめの問題がある。24時間毎日起居を共にする軍隊生活の中では、いじめからの逃げ場はない。
 雨宮氏は語る。
 「徴兵というと日本の若者にとっては遠い話かもしれない。でも、いじめの観点で捉えることで身近な問題になる。そこを入り口に徴兵制や軍隊について考えてほしい」
 今回のイベントには、韓国で徴兵を経験し、2年間服役したアン・アキ氏のほか、日本に留学して日本で就職した大分KCIA氏とヤン・ソンテク氏、反戦団体「戦争のない世界」に所属するケロ氏など韓国の若者も参加し、韓国徴兵制の現状と問題についての意見交換が行われた。
 若者の生きづらさが叫ばれる日本社会だが、隣国の徴兵制を見つめることで、若者共通の社会の課題が見えてくる気がする。
    −−「TOPICS 徴兵拒否でフランスに亡命した若者が緊急来日! 韓国徴兵制を考えるトークイベント『徴兵なんてイヤだ』が開催」、『第三文明第三文明社、2014年12月、14頁。

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